ソニーの音響体験「Locatone」グランプリ作品を渋谷で体験してきた スマホとイヤホンで渋谷川の歴史をめぐる街歩き

渋谷芸術祭とのコラボにより、ソニーの「Sound AR」音響体験を使って、渋谷を舞台にした作品を作るクリエイター向けコンテスト「Locatone Creator Contest 2022」が開催されたことは、既にロボスタでもお伝えしたとおりです。

応募数約100点の中から、寺田忠勝さんの『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』がグランプリを受賞しました。このグランプリ作品をはじめ、ファイナルに選出された10作品は、「Locatone」内で公開されているので、誰でも無料で楽しむことができます。

アプリ「Locatone」をインストールしたスマホ(iOSまたはAndroid)と、イヤホンがあれば手軽に楽しむことができる

そこで早速、天気のよい昼下がりに渋谷駅を出発。グランプリ作品『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』を体験してみました。後半はグランプリ受賞者、寺田忠勝さんのインタビューもありますのでお楽しみに!!

アプリ「Locatone」を起動して、予め『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』コンテンツをダウンロードしておこう




『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』とは

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』は、渋谷駅近の「渋谷ストリーム」前を出発し、明治神宮まで、渋谷を街歩きしながら、イヤホンから流れてくる音やストーリーを楽しむサウンドエンターテイメントです。


渋谷川って知ってた?

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』のテーマは「渋谷川」。かつて渋谷区・港区内を通って東京湾に流れ込み、いくつもの支流を持っていた全長約10㎞の川でしたが、高度経済成長期の波の中で、暗渠化(地下化)されて、ほとんどがその姿を消してしまっているそう。
その流れを感じながら、登場人物との会話劇と歴史を楽しみながら散歩するコンテンツとなっているのです。

スタート地点の「稲荷橋」。忠犬ハチ公はこの近くで亡くなったそう

スタート地点は「稲荷橋」。渋谷駅近の「渋谷ストリーム」前。わずかな距離だけ見える渋谷川を見るところからはじまります。「Locatone」は指定の場所に着くと位置情報からストーリーや音楽が自動的に始まる・・。おや、川の流れとともに誰かの声がイヤホンから聞こえてきましたよ。エピソードの1.「神様の願いごと」の再生がはじまりです。

神様の声がイヤホンから聞こえ始めた。神様の名前は「渋谷」。「頼みごとをひとつ聞いて欲しい」と頼まれる

声の主は神様。神様の依頼とは、どうやら渋谷川の支流の守り人と呼ばれる精霊を訪ねて、明治神宮(原宿)を目指すこと。次のポイントはアプリ画面に表示されたマップで確認できます・・どうやら次はハチ公を目指すようです。

マップは拡大して確認できる、次はハチ公に向かおう。ちなみには歩きスマホは危険なので、立ち止まってからマップの確認をしよう

おっと、その前にアプリ画面に「ARカメラ」というボタンが表示されているときは、神様のAR写真を撮って、姿を見ることができますよ・・試してみてくださいね。パチリ・・

こ、これが神様のお姿・・・び、微妙・・

あ、ちなみに注意点なのですが、クライマックスは明治神宮の中。明治神宮は夕方から夜にかけては閉門になってしまいますので、閉門時間を確認して、余裕を持って出発してくださいね。


守り人たちに出会う旅に出発

歩道橋を上がり、シブヤの街を歩き始める。今は見えなくなった川の流れが聞こえてきて穏やかな気持ちになる。そして、「Locatone」の楽しい機能のひとつ、歩く動作に合わせて、浅い水の流れを踏むような音が聞こえて面白い。ちなみに、スマホを振っても、面白いイベントが体験できるかもしれませんよ。
とか言っているうちに、渋谷のハチ公像の前に到着。新たなエピソード「目に見えぬ川の流れ」がイヤホンから流れ始めました。イケボの神様が登場しましたよ・・



宮下公園から表参道方面へ

イケボの神様が言うには、今でも「渋谷スクランブルスクエア」や「渋谷駅東口スクエア」の地下にも渋谷川が流れているとのこと・・知りませんでした。スクランブル交差点を渡って、宮下公園方面へ。

ここで渋谷川の歴史を聞いて、渋谷横丁へと向かう

2人目の守り人に会いに渋谷横丁へ・・ポップな感じで宇田川のおねいさんが出てきて、エピソード4.「陽気な蛍」がはじまりました。



渋谷川の暗渠化と、宮下公園の歴史、渋谷横丁の話を宇田川の守り人が語ってくれます。


こうして、キャットストリート、表参道、原宿を通って明治神宮へ。クライマックスが近付いていきますよ。
お一人でもカップルでも、グループでも家族でも。ぜひ楽しんでください。


目指すゴールはすぐそこ・・明治神宮


グランプリ受賞者、寺田忠勝さんインタビュー

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』を開発したグランプリ受賞者、寺田忠勝さんにインタビューしました。

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』でグランプリを受賞した寺田忠勝さん

編集部

グランプリの受賞、おめでとうございます。寺田さんは普段、どのようなお仕事をされているのですか? また、どんな経緯でこのコンテンツを作成したのでしょうか

寺田さん

普段は空間デザインの仕事をしています。デザインの中でも、音はとても重要だと従来から感じていましたが、どのようにクリエイションすれば良いのかと、常に考えていました。そんな時に今回、Locatoneのコンテストが開催されるということで音を使ったコンテンツ創作に挑戦してみようと考えました

編集部

渋谷川というテーマを選んだ理由やきっかけを教えてください

寺田さん

昔、この渋谷に渋谷川が地上に流れていて、それが今では暗渠化(地下をとおる水路)されているということを旅番組で耳にしたことがありました。今回、テーマが「渋谷」であり、「Locatone」という音を主題にした技術を使うということから、「いま街に見えている風景だけではなく、かつてそこにあって、今は見えなくなってしまったものを音で感じてもらうこと」はテーマとして面白いのではないかと考えました



編集部

渋谷駅から原宿付近まで、散歩にはいいけれど、少し長めのコースを楽しむ設定になっていますね。これには理由がありますか?

寺田さん

渋谷川の源流はいくつかあるのですが、渋谷周辺では稲荷橋のところに渋谷川の源流がわずかに見えているところがあります。見えている川を起点として最初に見てもらって、見えない暗渠を音を通じて明治神宮周辺まで追いかけていく・・そんな流れが物語として面白いのではないかと思い、このルートにしました。源流のひとつが明治神宮周辺にもあるのでそこをゴールに設定しました

編集部

コンテンツを創作する上で気を配った点はどこでしょうか

寺田さん

折角なので、コンテンツをラストまでプレイしてもらいたいと思い、その点を重視して工夫しました。というのも、途中で離脱せずにラストまで楽しみ続けてもらうのは意外に難しいのではないかと感じていて、ストーリーが途中で分岐する仕掛なども考えましたが、複雑にならないように、あえてシンプルな構成にこだわって作りました

編集部

グランプリを受賞したこのコンテンツをこれから体験してみようと思っているユーザーの方にメッセージや見どころ、注目点など

寺田さん

かつて渋谷に川が流れていたという発見と、今は見えなくなってしまった川を想像することで、他の街や自分が住んでいる街の成り立ちや歴史、愛着がわくような体験に繋がってくれるとうれしいな、と感じています



編集部

クライマックスやポイントになっているところを教えて頂けますか

寺田さん

キャラクターでは「渋谷」という神様が登場して、力を取り戻していく展開があって、ピークは橋が舞台になっているのですが、実は実際の源流があるのはもっと奥の新宿御苑の中にあります。意図としては、コンテンツのツアーで誘導するのではなく、ツアーをラストまで体験して頂いた上で「御苑に源流を見に行ってみよう」という余韻を残した構成にしています。音という余白のある体験を通して、その余白を次の行動で埋めるような体験へと繋がると面白いのではないかと思います。そこもぜひ体感してみてください。


※「Sound AR」および「Locatone」はソニーグループ株式会社またはその関連会社の商標です。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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