スマート農業、安価版アイガモロボの井関農機、ナチュラルスタイル、有機米デザインが連携

有機米デザインは、ナチュラルスタイル、井関農機と連携し、安価版アイガモロボの実証を開始すると発表した。

特許出願中の安価版アイガモロボの主な特徴は、ナチュラルスタイルが開発したスマホ通信機能を省いた「自動航行システム」と、新たに開発した「ブラシ型パドル」の搭載となる。抑草機能はそのままに「ほ場の均平」「水管理」「強風」に関して技術向上をはかっており、2024年度に全国で実証実験を行い、製品化に向けた準備に取り組んでいくとしている。尚、発売時期については未定。

実証・開発のポイント

2023年から販売開始したアイガモロボ現行機は、農研機構らと行った実証実験により、十分な抑草効果と収量の平均10%増加、機械除草回数の58%減少が確認され、ユーザーからも好評を得ており全国各地の水田で稼働している。一方で現行機の導入には、アイガモロボに合わせたほ場条件に整えることが必要なことから、条件が合わない圃場では導入に至らないことがあった。

今回の安価型アイガモロボでは抑草機能・生育への影響はそのままに適応条件を拡大し、スマートフォンとの通信機能を省きながら操作の簡易化と機能向上及び低価格化を図る。水のにごりやトロトロ層での抑草効果に加え、ブラシが水底を掻くことで発生初期の雑草を浮かせる効果も期待されている。

開発ポイント


・中山間地などでも導入しやすいサイズや価格
・稼働スピードを向上し、1台あたりの稼働可能面積を拡大
・基本作動でスマートフォンを不要とし、操作に不慣れな方への導入ハードル低下
・ほ場の必要水位や均平精度などの稼働条件を拡大
・ブラシ型パドルや小型化により強風適応性を拡大
・ブラシ型パドルによる推進力向上で稲の繁茂程度に関わらない安定稼働

今後の展開


2024年度には、様々な条件下での課題抽出を目的に、全国で安価版アイガモロボの実証実験を計画している。発売時期・販売価格については現時点では決定は氏ていないが、早期の市場投入を目指し、有機米デザインが製品化・量産化・製造、ナチュラルスタイルが要素技術開発を担い、発売に向けた準備を進める。

安価版アイガモロボの開発により、有機米の普及・拡大に向けた取り組みを一層加速させ、国が掲げる「2050年までに(耕地面積に占める)有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大する」目標達成にも貢献するとしている。

アイガモロボとは

アイガモロボは、代掻き後の水田を太陽光発電で得られる電力によって自律航行て、水中を撹拌し泥を巻き上げることで光を遮るとともに、土の物理性に影響を及ぼし、水面下にある雑草の生長を抑制し、除草剤を使わずに雑草が生えにくい状態をつくることで、除草にかかる労力を大幅に削減できる。

アイガモロボは、2012年より元日産自動車のエンジニア2人を中心に、有機米栽培における大きな課題の一つである除草手間を極小化することを目的とした自動抑草ロボの開発がスタート。その後、ヤマガタデザインに開発の母体が順次移行され、実用化に向けて更に加速するべく、2019年に有機米デザイン(設立時ヤマガタデザイン100%出資)を設立、東京農工大学との共同研究契約を締結し開発を進め、現行モデルは、2023年に井関農機から販売開始された。

各社代表コメント

有機米デザイン株式会社 代表取締役 山中大介 氏

当社のMISSIONは、日本の農業を世界で急成長するグリーン市場に繋ぐこと。アイガモロボは水田の有機化に向けて重要なアイテムになると考えています。過去からの試行錯誤を重ねて、今回、本格実験を開始する新型アイガモロボ(安価版)に対して、私たちは非常に大きな手応えと自信を持っています。早期の商品化を実現するべく、井関農機様とナチュラルスタイル様と共に、引き続き開発を進めて参ります。

株式会社ナチュラルスタイル 代表取締役 松田優一 氏

今回の安価版アイガモロボは無農薬稲作のハードルを下げる魅力的なロボットです。現代の人々が求めるこれからの時代の米作りにナチュラルスタイルは技術で貢献できるよう、有機米デザイン様、井関農機様と共に研究開発に努めてまいります。

井関農機株式会社 取締役常務執行役員 縄田幸夫 氏

当社は「食と農と大地のソリューションカンパニー」として持続可能な農業の実現を目指しています。有機農業をはじめとする環境保全型農業の確立には農業機械だけではなくスマート技術と栽培技術を組み合わせたソリューションを図っていくことが必要です。アイガモロボが環境条件の異なる各地の水田で使っていただけるよう実証・開発を進め水稲有機栽培の拡大に努めてまいります。


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ロボスタ編集部

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