ヒューマノイドの記事をロボスタでも頻繁に取り上げるようになってきた。また、他のメディアでもよく見かけるようになってきた。実際に、テスラ、NVIDIA、ディズニー、フィギュアAI、Agility、Apptronikなど、多くの企業が関連技術への参入を発表している。
テスラがヒューマノイド「オプティマス」を披露
ヒューマノイドが注目されている理由のひとつが、何かと話題を提供してきたイーロン・マスク氏が2021年8月、テスラの発表会「Tesla AI Day」で、市場に投入するヒューマノイドを開発していくことを表明したことがキッカケのひとつになっているだろう。
その後、テスラは実際にTesla Bot(オプティマス)のプロトタイプを公開し、YouTubeを通して順次、開発状況を発信している。
■ Tesla Bot Update
2023年9月には、ブロックの色を見分けて振り分けるソーティング作業や片脚立ちストレッチなどを修得した動画を公開している。(関連記事「米テスラ、ヒューマノイドの最新動画を公開 ブロックの色を見分けて振り分けるソーティング作業や片脚立ちストレッチなどを修得」)
■ Tesla Bot Update | Sort & Stretch
Figure AI
また、ヒューマノイド開発のスタートアップ、米フィギュアAI(Figure AI)は、マイクロソフト、NVIDIA、オープンAI、元アマゾンのジェフ・ベゾス氏が投資するというニュースで話題となった。2024年に入ってからのことだ。
ヒューマノイド「Figure 01」は動画として公開されており、会話で秀でるChatGPTとの連携によって、人と会話しながら、人の指示を理解・解釈して行動を起こす様子とそのレベルが、ある種、衝撃的だった。
■Figure Status Update – OpenAI Speech-to-Speech Reasoning
■Figure Status Update – Real World Task
「GTC 2024」でNVIDIAはヒューマノイド開発環境を提供すると宣言
従来からロボティクス開発環境を提供してきたNVIDIAは、自社のイベント「GTC 2024」で次世代の超小型AIコンピュータ「Jetson Thor」では、ヒューマノイド開発プラットフォームを完備する計画「GR00T」(GRゼロゼロT)を発表した。
ディズニーのロボット開発に「Jetson」と「Isaac」
CEOのジェンスンフアン氏の基調講演では、「Jetson」を搭載し、シミュレータ「Isaac」でトレーニングされたディズニーの可愛いロボットたちが登壇して、会場を沸かせた。
■Droids in Training: Imagineers Conduct Playtest at Star Wars: Galaxy’s Edge
■Droids in Training: Imagineers Conduct Playtest at Star Wars: Galaxy’s Edge
正確には、ディズニー・リサーチとウォルト・ディズニー・イマジニアリング・リサーチ&ディベロップメントが開発したロボットで、ディズニーらしく表現力豊かなモーションが可能となっている。一見してスター・ウォーズに登場するようなデザインだが、実際に、ディズニーランド・パークの「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」(スターウォーズのアトラクションやショップ等のエリア)でトレーニングを兼ねて披露された動画が公開されている。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のグルートのデザインも
ディズニーがロボティクスの開発に注力していることは以前から業界では知られていて、実際にディズニーパーク内でロボットが多用され「アニマトロニクス」(オーディオアニマトロニクス)という名称で精巧に動くロボットがアトラクション内で既に活躍していることをご存じの人も多いだろう。
下記は、ウォルト・ディズニー・イマジニアリング・リサーチ&デベロップメントが開発(研究)中の二足歩行ロボットの様子。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のグルートのデザインをしたコンパクトなロボットだが、50度以上の自由度を持ち、スタイリッシュに歩行し、ジェスチャーや感情表現することができる(NVIDIAの技術が使われているかどうかは不明)。
■Disney Imagineers Develop Cutting-edge, Free-roaming Robotic Actor
■First Look at The Na’vi River Journey Shaman | Disney’s Animal Kingdom
Agility Robotics「Digit」
「GTC 2024」で明らかになったヒューマノイド関連のニュースとして、かねてより注目を集めていたAgility Roboticsのヒューマノイド「Digit」にはNVIDIAの「Jetson」が搭載され、デジタルツインプラットフォーム「Omniverse」とシミュレータ「Isaac」によってトレーニングされたことだ。「GTC 2024」の展示ホールでは実機が展示され、スタッフが来場者からの質問に回答していた。
■ Agility Robotics「Digit」GTC 2024での報道関係者向けの解説(英語)
Digitは既に多くの企業がテストを行っていて、中でもシアトルの南にあるアマゾンのロボット研究開発施設でテストされていることが大きなニュースとなった。果たして、スマート物流倉庫で人間と協働して成果が上げられるのか、注目したいロボットだ。
■ Agility Robotics Broadens Relationship with Amazon
Apptronik「Apollo」
もうひとつの「GTC 2024」で明らかになったニュースが、Apptronikのヒューマノイド「Apollo」にも「Jetson」と「Omniverse」「Isaac」が採用されていたことだ。こちらも「GTC 2024」の展示ホールでは実機が展示され、スタッフが来場者からの質問に回答していた。
「Apollo」には2基の「Jetson Orin」が搭載されていて、1基がブレイン(頭脳)、もう1基がモーションの制御に使用されている。
■ Apptronik「Apollo」GTC 2024展示ホールと報道関係者向けの解説(英語)
「Apollo」はメルセデスの工場で試験導入されたことで話題になった。資料や動画を見ると、二足歩行に拘らず、上半身だけのバージョンや車両機構と組み合わせたバージョンも用意され、現場に合わせた実用性を確保している。
■ Workcell Delivery Wheeled Base
■ Case Picking (シミュレータでトレーニングを重ねる)
ヒューマノイド開発に参入する企業は更に増える
これらNVIDIAのJetsonやシミュレーション環境では、既にロボティクス開発についての実績やフィードバックがあるため、今後リリースされる「Jetson Thor」やロボット開発プロジエクト「GR00T」は、実用的にロボティクスSDKやセンシング制御ソフト、デジタルツインやシミュレーション環境が用意される可能性が高い。そうなれば、今まで困難とされてきたヒューマノイド開発に参入する企業は更に増えると考えられる。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。