パワード義足「Bio Leg」が米国で医療保険適用承認を取得 モーター駆動で階段の昇降や立ち上がりもスムーズにアシスト

BionicMは、同社が開発した動力アシスト機能付きパワード義足「Bio Leg」について、2024年5月24日に米国の審査機関であるPDAC(Pricing, Data Analysis and Coding)により医療保険適用が承認されたことを発表した。日本を含むアジアのメーカーが開発した義足としてL5859のコードが承認されるのは初めての事例となる。


これまでの米国におけるBio Legの試着評価では、誤動作無く、ユーザーの動作に合わせて自然かつ直感的に動いく点において高いフィードバックを受けおり、BionicMの技術的強みである制御アルゴリズムにより、高い安全性、かつ使い勝手の良いパワード義足を実現している。


医療保険適用承認について

米国において義足を購入する際には、PDACが管理するHCPCS(Healthcare Common Procedure Coding System)コードが医療保険請求時に使用される。各コードには保険償還価格が定められており、PDACによるコードの割当承認を得られることは、公的医療保険(メディケア)および民間医療保険の適用対象となることを意味する。

今回、BionicMはBio Legが有する機能に応じて、L5828、L5845、L5848、L5856、L5859の5つのコードを申請し、PDACのコード検証審査の結果、5つ全てにおいて割当が承認された。特にL5859は「モーターの力によって膝の曲げ伸ばしをアシストする機能」を有する義足に認められるコードであり、現在米国市場にある膝上義足のコードとしては、新規性・先端性の高いものとされている。


L5859の使用が承認されている義足はまだわずかで、日本を含むアジアのメーカーが開発した義足としてL5859のコードが承認されるのは初めての事例。


PDACとは

米国保険・福祉省内で米国公的医療保険のメディケア・メディケイドを統括するCMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)傘下の機関。医療機器の価格設定、データ分析、医療保険に関するコード付けなどを行うための専門機関。

PDACによるコード割当の承認を得るためには、FDA登録情報、製品の仕様および機能に関する詳細の説明、製品サンプルの提出が求められ、これらの情報を下に審査を受けることとなる。

Bio Legについて

Bio Legは、ロボティクス技術を駆使して装着者の動作をアシストするパワード義足。脚の切断により失われた筋力を義足の動力で代替することで、装着者の身体的負担を軽減する。Bio Legは、より自然な動作、アクティブな活動をサポートし、日常生活動作の幅を広げ、QOLの向上に寄与することが期待されている。

これまで100名を超える義足ユーザーの試着を踏まえて実用化され、2023年7月には米国食品医薬品局(FDA)のクラスⅡ医療機器として登録を完了した。


米国市場について

米国の義肢装具市場は約43億USドル(約6748億円)にのぼり、下肢切断者数の増加に伴い、継続的に拡大している世界最大の市場である。公的医療保険や民間保険、労災保険、軍人向け支給制度など、米国における幅広い制度環境下においてハイエンド製品も多く普及している市場であり、特にこの2~3年、パワード義足の市場は急速に拡大している。

背景として、米国の下肢切断者の切断年齢において、45歳以上の切断者数が全体の88%を占めていることが挙げられる。筋力の衰えた高齢者など低活動の義足ユーザーの増加に伴い、動力アシスト機能をもつパワード義足へのニーズが高まっている。

さらに近年では、高齢者をはじめとする活動度の低い下肢切断者に対しても、Bio Legが有する電子制御機能の有用性が認められてきている。米国保険・福祉省のCMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)は、公的医療保険によって電子制御機能を有する義足を活動度の低い下肢切断者へより多く普及させるための制度改定の検討を進めている。


今後の展開について


BionicMは、2024年7月より米国の予約済み顧客へ順次Bio Legの納品を行うとしている。

今回医療保険適用承認を取得したことで、労災保険、軍人向け支給制度に加えて、公的医療保険や民間保険など、米国における幅広い支給制度を活用してBio Legの保険償還とアクセスが進展できるようになった。

米国における制度改定の流れはBio Legにとって大きな追い風であり、今後BionicMはより多くの方にBio Legを届けるために事業を加速してまいくとしている。

代表取締役 孫小軍 氏のコメント

2015年からの東京大学での研究に始まり、起業を経てチーム一丸で開発を行った長年の成果が認められ、米国の当事者様に技術・製品を届けることができることについて、Powering Mobility for Allをミッションとする企業として非常に誇りに思います。

動力アシスト機能を有するパワード義足は、様々な研究機関や大学等で長年研究され、また業界・下肢切断者から求められ続けていた技術である一方、技術的ハードルの高さなどからなかなか実用化されてきませんでした。今回PDACによりBio Legの動力アシスト機能が医療保険適用として正式に承認されたことは、義足業界のターニングポイントとなり、パワード義足の普及をさらに加速できると確信しております。
医療保険を活用し、多くの方にBio Legを届け、自身の足で自由に動くという根源的なモビリティの向上に貢献していきたいと思います。


関連サイト
BionicM株式会社

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