生成AI活用の決め手は「RAG」 アクティブな企業の約5割がRAGに取組中 エクサウィザーズ調査 RAGとは何か? も解説

エクサウィザーズのグループ会社であるExa Enterprise AIは、2024年5月27日、29日に開催した生成AIセミナーにおいて、「生成AIの利用実態調査」を実施し、302社402人から回答を得た。2023年4月から継続的に調査を実施しており、同年12月に実施した3回目に続き、今回で4回目の実施となる。

本調査では、社内データ連携「RAG」に約5割が取り組み中と回答し、生成AIにおいてRAGを活用する時代へと移行したことがうかがえた。


RAGとは

RAGとはRetrieval Augmented Generationの略。RAGは「検索拡張生成」技術と訳され、検索技術と生成技術を組み合わせ、大規模言語モデルと併行して、外部のデータベースやドキュメントから情報を取得して回答を生成する技術。
Open AIのChatGPT(GPTシリーズ)やGoogleのGeminiなど、大規模言語モデル(LLM)等の進化が著しいが、ビジネス分野で活用するには企業ごとに独自データや製品情報、プライバシーに関する情報などを追加しなければ実用的ではない。大規模言語モデルのハルシネーション(誤った情報)による情報提供も防ぎたい。一方、追加したいこれらの独自データは自社のみで所有したい秘匿性の高いものも多い。
そこで、RAGを使用して、自社が運用するサーバ等に独自のデータベースで学習したモデルを構築、汎用的な大規模言語モデルによる検索の前段のプロセスに独自モデルの検索と生成を設置することで、自社専用のデータ提供を付加する。標準的なフォーマットに沿って構築して、RAGのデータのみアップデートしたり、他の大規模言語モデルに移行したり、運用面では汎用性を持たせることも容易となっている。


Exa Enterprise AIによる調査のポイント

・RAGに取り組み中が約5割、関心ありが約4割という結果となり、RAGの活用が前提に
・個人の生成AIの活用レベルは「レベル5(日常的に使用)」が継続的に増加。さらに全社導入は6割弱へ急拡大
・利用の定着化に必要なこととして、3割弱が「社内データ連携(RAG)」と回答。特に、社内での生成AI利用率が高いほどRAG活用への関心が高い。回答者の4割がデータの管理にかかわる課題に直面


個人の業務における生成AI活用レベルの推移~レベル5(日常的に使用する)と回答が4割弱まで増加~

生成AIの業務での活用レベルの推移(出所:Exa Enterprise AI)

本調査では、2023年4月の調査開始から「ChatGPT」など生成AIの業務での利用状況を、レベル1(関心なし)、レベル2(関心はある)、レベル3(試しに利用)、レベル4(時々使用)、レベル5(日常的に使用)の5段階に分類し、調査を実施している。

RAGの活用状況~取り組み中が約5割~

RAGの活用状況(出所:Exa Enterprise AI)

本調査でRAGの活用状況を聞いたところ、取り組み中が約5割、関心ありが約4割という結果となり、その内、4%が実効果を感じていることが分かった。生成AIの活用レベル5の割合が増加したことが、組織でRAGの活用にもつながっているものと考えられ、生成AIの活用はRAGの活用が前提の時代へ移行したことがうかがえた。

RAGの課題~回答者の4割がデータにかかわる課題に直面~

RAGを活用するにあたっての課題(出所:Exa Enterprise AI)

一方で、RAGを活用するにあたっての課題も浮き彫りになった。特にデータに関わる課題を抱えているとの回答が多く、「必要な情報がデータ化できていない」「データはあるが形式はバラバラ」などが挙げられた。また、生成AI活用レベルが高い組織では、データに関わる課題から「前処理が不十分で精度が上がらない」「利用者や経営陣の期待値が高すぎる」といった課題へと移っていくこともうかがえた。

生成AIの導入部門の推移~前回調査より全社導入が急拡大して過半数に~

生成AIの導入部門の推移(出所:Exa Enterprise AI)

前回調査(2023年12月)より全社導入がさらに急拡大し、前回の約3割から今回は6割弱と半数を大きく上回った。全社的な導入が広がったことで、社内での連携や共有が高まり、日常的に利用するレベル5の増加につながったものと考えられる。

生成AIの組織利用率~組織での生成AIの利用率は増加傾向にあるものの、「3割程度の社員」以下が約7割~

組織内での利用率の向上は、前回調査から依然として重要課題となっている。回答を見ると、「ほぼ使われていない」は減り、「3割程度の社員」が増えてはいるものの、「3割程度の社員」以下が約7割弱との結果となった。

 一方で、社内利用率100%の企業では、前回調査より活用促進における平均施策数が1.8から2.4に増加しており、特に「プロンプトの共有」に取り組んでいるのは5割超という結果となり、積極的な活用促進活動を行っていることが分った。なお、活用促進策は、「プロンプトの共有」「良い社内活用事例の共有」などが挙げられる。

生成AIの定着策~社内データ連携(RAG)が1位~

生成AIの定着化に必要な施策(出所:Exa Enterprise AI)

生成AIの利用定着化に必要なこととして、3割弱が「社内データ連携(RAG)」と回答し、1位となった。特に、社内利用率が「8割程度の社員」以上と回答した場合、RAGの活用が定着化に必要だと考えている割合が4割とさらに高くなることが分かった。

調査結果を踏まえたコメント

Exa Enterprise AI 代表取締役 大植択真 氏

当社では、急速に成長する生成AI市場の現状を把握するべく、ChatGPTの一般公開後4回にわたって継続的に「生成AIの利用実態調査」を実施してきました。今回、新たに見えてきたことは、社内データを連携させる「RAG」への注目の高さです。当社のプロダクトである「exaBase 生成AI」もRAGを活用したデータ連携機能を有しており、より精度の高い回答を生成AIから得ることができるとご好評いただいています。その他にも、組織内での利用率向上のため、生産性が可視化できる機能や社内で定着化させるためのサポートなどを提供しており、導入企業様の業務効率化を実現しています。
そして、全社的に導入する企業が過半数に達したことは、今後生成AIの活用レベルがさらに向上することにつながると考えられます。経営者や所属長が積極的に生成AIを活用することで社内への浸透が加速し、良い活用事例が生まれ、部署内、部署間で互いに高めあう環境ができるからです。
今後は、生成AIの定着策としてRAGを積極的に導入していくことが、業務の効率化に繋がるカギとなると考えられます。


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ロボスタ編集部

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