株式会社エルザ ジャパンは、驚異的な身体能力を持つ全地形対応の車輪付き四足歩行ロボット「Lynx(リンクス)」(DEEPRobotics社製)の予約販売を実施すると発表した。
予約特価は2,915,000円(税込)。予約受付の締切は2025年2月28日(金)。
2024年11月、YouTubeで新型の四足歩行ロボットの動画が公開され、その機動力の高さが話題になっていた。動画のロボットは今回、予約受付が発表されたDEEPRobotics社の「Lynx」。動画を見ると「走破性を重視する場合、四足歩行とヒューマノイド(二足歩行)の境界を線引きする必要はないのかもしれない」と感じさせる驚異的な動きをしている。
■Extreme Off-Road | DEEPRobotics Lynx All-Terrian Robot
DEEPRobotics Lynxの特徴
「Lynx」は、従来からある同社の「X30」や「Lite 3」と同様の四足歩行型の外観を基本としている。ただ、四本の足には先端に駆動輪を設けられていて、全地形対応型の自律走行ロボットとなっている。
この四肢形状を利用して大きな段差を乗り越えたり、不整地でも高速に移動したりすることができる。また、二本足でもバランスを取って移動したり、斜面を下ったりできることが動画からも見てとれる。
更に、「Lynx」はIP54の防塵防水性能をもち、川や沼地のほか悪天候下や災害現場、消防現場などでもスムーズな移動を実現するという。
更にLynxは「DEEPRobotics AI+」イニシアチブに基づいて構築。不整斜面や階段・石段などを本体に搭載するカメラを使って2脚の状態で自律バランスを取って、速い速度で斜面を下るなど、同社のEmbodied AIに関する知見をLynx独自の設計に合わせてカスタマイズした様々な機能を備えているという。
Lynxの概要
・最大80cmの段差を登り下り可能
・最高5m/s(時速 約18㎞)
・連続した22cmの段差を移動可能
・ペイロード:12㎏まで
・JIS保護等級IP54の防塵防水性能
・外形寸法:80cm×50cm×60cm(スタンディングサイズ)、質量30㎏
・2025年1月現在、実際の製品お引き渡しは2025年3月以降になる見込み。
・今後の製品開発状況によっては引き渡し時期が大きく前後する場合がある。
・その他不明点については同社担当営業まで問い合わせ。
予約の受付は、こちら製品ページから、申込みフォームではなくメールで受け付けている。同ページの「予約販売お申し込みはこちらから」をクリックしてメール送信するか、「DEEPRobotics Lynx予約販売申し込み」というタイトルを付けてメールを送信(sales_md@elsa-jp.co.jp)して申込む。
四足歩行ロボットの現在位置
DEEPRoboticsの日本の正規代理店、エルザ ジャパンに問い合わせると「このLynxはまだ当社内で実機やデモをお見せすることはできませんが、既に製品展開している四足歩行ロボットを見に来ませんか」ということだったので、四足歩行ロボット市場の現在位置を知るためにも、プレゼンテーションとデモを見せてもらった。
エルザ ジャパンが現在、主力として取り扱っている四足歩行ロボットは、大型の「DEEPRobotics X30」と小型の「DDEEPRobotics Lite 3」。「X30」は産業用ビジネスユース、「Lite 3」は主に教育・研究用としてリリースしている。いずれも開発用SDKが用意されている。
ただ、用途や性能が大きく異なり、ソフトウェアの共通部分は少ないため、カスタマイズ開発はそれぞれにおこなう必要がある。
■ 大型の四足歩行ロボット「X30」の遠隔操作と自律歩行のデモ
■ 小型の四足歩行ロボット「Lite 3」のデモ
「X30」は遠隔操作と自律巡回に対応
産業用ビジネスユースの「X30」は遠隔操作と自動巡回に対応している。四足歩行なので、階段や不整地など、車輪駆動のロボットが苦手の場所も入っていける点が強みだ。
人が立ち入るのに危険な場所でも遠隔操作によって「X30」が行き、設置されている計測メーターを読んだり、センサーで空気やガス等の濃度を測ったり、状況の把握を行うことができる。
自動巡回も同様に、予め設定したルートを定期的に巡回し、計測機器の点検や警備を遂行することができる。これらの用途では階段を昇降する四足歩行ロボットの強みを活かすことができる。
プラントや工場、発電所や変電所では、今まで人が巡回していて、計測メーターや温度等を確認していた業務を、四足歩行ロボットに代替して自動化する流れが急速に進んでいるという。
「X30」は防水防塵仕様で、-20度~55度の温度環境に対応し、カメラや様々なセンターを増設できる。LiDARや暗視カメラを装備して暗闇の中で動作するカスタマイズも可能だ。こうした機能もあり、この分野ではDEEPRoboticsがほぼ100%、圧倒的な導入のシェアを獲得しているという。
■Introducing X30, industrial flagship quadruped robot
中国では四足歩行ロボットの実証実験や導入が日本より進んでいる。公道でも四足歩行ロボットを自由に走らせることができるため、その点では、研究開発を含めて、社会実装が進むポイントにもなっているだろう。
災害時には二次被害を抑えた状況把握に
エルザ ジャパンによれば、日本では災害時に状況把握のために二次被害の恐れがある災害現場にも遠隔操作で「X30」が入って行き、現場の状況把握を行うことにも活用できると見込んでいる。
また、「X30」は防犯にも活用できるという。最近は太陽光パネル等の銅線が施設から盗まれる事件が増えているが、セキュリティカメラで検知した現場に四足歩行ロボットが向かうことで防犯のレベルが高まることになるだろう。実際に「X30」は大きいので、初見では近付いてくるだけで、不法侵入者に威圧的な印象を与えることができるだろう。
比較的 小型の「Lite 3」は研究・開発用に最適
エルザ ジャパンが販売しているもう一種類の四足歩行ロボットが「Lite 3」シリーズ。「X30」と比べると小型だが、価格が995,500円からとリーズナブルに導入できる。日本で発売して間もないものの、学校や教育機関などに既に10数台の納品実績がある。
「Lite 3 Basic」「Lite 3 Venture」「Lite 3 Pro」「Lite 3 LiDAR」の4種類をラインアップしている。「Lite 3 Pro」と「Lite 3 LiDAR」には、AI処理を支援する「NVIDIA Jetson Xavier NX」が搭載されている。
■Lite3 : Extraordinary locomotion, Modify with your imagination
AgileX社の自動走行ロボットも取扱い
エルザ ジャパンはAgileX社との連携も発表している。四足歩行ロボットの他に、AgileXのクローラー、車輪やキャタピラー駆動のロボットなどもリリースしている。
エルザ ジャパンは「階段の昇降を想定しない場合は、コスト面や最大積載量(ペイロード)の面で、四足歩行ロボットより秀でている」としている。
エルザ ジャパン公式サイト
ロボティクス国際会議「ICRA 2024」横浜で開催 ソニーや川崎重工、中国Unitreeなどが新ロボットを初公開(森山和道)
アスクがUnitree Developer Conference 2024 出展・講演 建設業界における四足歩行ロボットの活用例を紹介
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。