ソフトバンクの子会社Gen-AX 生成AIがコンタクトセンターなどの照会応答業務を支援する「X-Boost」を発表

ソフトバンクが100%出資する企業で、生成AIで企業の業務改革を支援するGen-AX株式会社(ジェナックス)は、コンタクトセンターやバックオフィス部門向けに、照会応答業務を生成AIが支援する生成AI SaaS「X-Boost(クロスブースト)」の提供を、2025年1月23日から開始すると発表した。


Gen-AXは、報道関係者向け説明会を開催し、代表取締役社長 CEOの砂金信一郎氏やソフトバンク、日本マイクロソフトも登壇した。生成AIのクラウド環境を日本マイクロソフトの国内リージョンでおこない、市場の開拓と販売支援は、国内の大企業の約93%との取引実績を有するソフトバンクがおこなう。

Gen-AX 株式会社 代表取締役社長 CEO 砂金信一郎氏

コンタクトセンター業務や照会応答業務は、ユーザからの問合わせを受けるサポートセンターだけでなく、社員からの問合わせに対応する業務も多い。


多くの企業では、これらをスタッフがメールや音声で対応しているが、人手不足に加えて、業務負荷が大きく、潤沢な人材確保に苦心している。また、新人と熟練者など、応対品質のバラツキにも課題がある。


この業務を生成AIによるAIエージェントに代替していくサービスを展開していく(まずは2段階での提供を予定)。


ソフトバンク株式会社 専務執行役員 法人副統括 藤長国浩氏

販売はソフトバンクが、LLM開発はSB Intuitionと連携する




「X-Boost」の概要

Gen-AXは、2024年7月に本格的に事業を開始したソフトバンクの100%子会社。「自立に自律を融合し、次の“流れ”を生成する」をミッションに掲げ、企業向けの「生成AI SaaS」と「コンサルティングサービス」を提供。企業のAXを支援する。


砂金CEOは「今後、消費者ひとりひとりに生成AIエージェントが寄り添う時代がやってくる。そんな時代に企業側が生成AIを導入していなくてどうするんですか?」と課題を提起した。


「X-Boost」は、導入企業が自社のデータを活用してAIの精度を継続的に高め、自社に合ったAIに「賢く育てる」ことができる点が特長の生成AIサービス。Gen-AXの親会社であるソフトバンク株式会社が強固な法人顧客基盤を生かして販売すると同時に、両社が連携して「X-Boost」の導入と運用を強力にサポート、企業の「AX」(AIトランスフォーメーション)を支援していく。

再掲

「X-Boost」は、コンタクトセンターやバックオフィスなどにおける問い合わせ対応を担う生成AIサービス(以前、ソフトバンクはIBM Watsonで同様のコンセプトのサービス展開をはかっていた過去がある)。


オペレーターが問い合わせ内容を入力すると最適解を提案

本日から提供を開始するのは第1段階。オペレーターが問い合わせ内容を入力すると、マニュアルやFAQなどの膨大な社内データからナレッジを検索し、最適な回答案を自動生成して、オペレーターの画面にスピーディーに表示する。導入企業は、業務負荷の軽減、対応スピードや品質の向上、対応内容の均一化などを実現できる。

再掲。オペレーターが問い合わせ内容を入力すると、マニュアルやFAQなどの膨大な社内データからナレッジを検索し、最適な回答案を自動生成して、オペレーターの画面にスピーディーに表示する。2025年度中にAIエージェントが直接会話する「8割の自動化」を目指す

将来的には音声対応をおこない、顧客や社員からの問合わせに対して、「X-Boost」のAIエージェントが直接回答することを、2025年度中に目指す。

Gen-AXによれば「生成AIを導入した企業の中には、自社が保有する社内データを十分に活用できず、AIモデルの回答精度が低いまま、業務現場で利用が広がらないケースが散見」されるという。「X-Boost」は、導入企業が保有するデータの事前学習に加えて、オペレーターなどの現場担当者が実際の業務で利用したログをフィードバックデータとして活用し、フィードバックと改善のサイクルを繰り返すワークフローにより、継続的にAIモデルの精度の向上を行う。

構成イメージ図

また、AIモデルの学習や検索精度が不十分な場合、画面上でより適切な学習データを選択して追加学習を実行することができる。その他、回答精度をテスト検証できる機能も備えるとしている。

「X-Boost」画面イメージ


「X-Boost」の特長

Gen-AX 株式会社 プロダクトマネージャー 永野玲氏


RAG、エンベディングモデル、LLMOps

「X-Boost」の特長は、「RAG(検索拡張生成)」や「エンベディングモデル」などにより、高い回答精度を実現する。また、「LLMOps」(Large Language Model Operationsの略。LLMの管理に使用される運用手法)によって、導入企業自身がAIの精度を継続的に向上させ、自社の特性に合ったAIに「賢く育てる」ことができる運用システムとして提供する。


直感的で操作しやすいUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)
直感的なUI・UXと簡単な操作により、短期間での導入を可能にする。エンジニア以外の現場担当者でも、AIモデル学習やデータの更新などを行うことができる。

高い回答精度
データの構造化や検索拡張生成(RAG)、エンベディングモデルなどの技術により、高い回答精度を実現する。

LLMOpsによるAIモデルの最適化
導入企業が保有する社内データを活用し、専用のAIモデルを構築する。また、実際の業務現場において、フィードバックと改善を繰り返すワークフローにより、精度を継続的に向上させる。

日本国内のサーバーで導入企業のデータを管理
データは国内のサーバー(Microsoft Azureの国内リージョン)で安全に管理する。また、導入企業専用のAIモデルの学習のみで使用し、汎用AIモデルの学習には使用しないため、導入企業のデータが外部利用されることはない、としている。

データの蓄積による拡張性
現場での利用を通して、自社の業務に合ったデータを蓄積することができる。蓄積されたデータを活用し、Gen-AXが今後提供を目指す自律思考型AI SaaSなど、より高度で複雑なAI SaaSにもスムーズに移行できる。


「X-Boost」の主な機能

導入企業が保有する社内データの検索機能、検索結果の要約機能
回答案の生成
AIモデル学習、検索データ管理機能
問い合わせチームの管理、ユーザー管理機能


販売および顧客サポート
国内の大企業の約93%との取引実績を有するソフトバンクが、顧客への提案・販売を行なう。また、Gen-AXが業務フローの整理(BPR)やデータ収集および作成、導入を強力にサポートする。




今後の展開

今後は機能の拡充などを図り、さらなる利便性の向上を目指す。また、2025年度に、コンタクトセンター業務の自動化を図る自律思考型AI SaaSの提供を目指す。さらに、同じグループ内の企業であるSB Intuitions株式会社と、LLM(大規模言語モデル)に係る実証実験を行い、連携を図る予定。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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