宮崎県都農町、岡山理科大学、NTT東日本、NTT西日本は、2022年12月より「水産業夢未来プロジェクト」として、都農町の新たな水産業創出に向けた取り組みを実施。2023年3月より、実証用養殖プラントにて、ICTと水産生物の効率的な陸上養殖を目的として開発された人工海水「好適環境水」を活用した「クエタマ」「タマカイ」の9か月間の試験飼育を実施。完全閉鎖循環式陸上養殖では世界初となる試験養殖に成功した。
今後は、特に高い生残率と成長率を確認できた「タマカイ」の本格的な量産体制の構築を進めていくとしている。
取り組みの概要
2023年3月末に都農町に完成した7.4トン水槽×2基の実証用養殖プラントにおいて、日本をはじめとするアジア各国で高級魚として好まれているハタ科の中で、完全閉鎖陸上養殖方式では成功事例が無い「クエタマ(Epinephelus bruneus×Epinephelus lanceolatus)」と「タマカイ(Epinephelus lanceolatus)」を選択し、約9か月間の試験飼育を実施。
本養殖環境においては、岡山理科大学保有技術の好適環境水・養殖ノウハウ・養殖プラントシステムとNTT東日本グループの持つICTを組み合わせることで、生育速度の向上と生産に関わる作業の効率化・最適化の実現に取り組んでいる。また、岡山理科大学から都農町に遠隔指導をすることによる地域の養殖人材育成と手技・ノウハウの獲得をめざしている。
成果内容
「クエタマ」および「タマカイ」の両魚種の中で「タマカイ」については、94.2%という高い生残率と、養殖における一般的な成長速度の約3倍という高い成長率の両立が確認された。特に、高い生産性は今後の量産化・ビジネス化に向けた大きな成果であると考えられている。
また、今回、試験飼育に携わった飼育員は養殖経験が全くなかったが、養殖経験のない飼育員でも現地で不安なく養殖作業に取り組めるように、魚の生育に対して影響を与える水質項目等の環境状況・魚の生育状況をデータ化・見える化して管理することや、岡山理科大学から的確な遠隔指導を受けるようにしたことで、手技・ノウハウを積み上げながら過去に事例がない高いレベルの養殖を実施することができた。
今後の展開
今回、試験飼育を行った両魚種のうち、特に「タマカイ」については、元々持ち合わせている先進性・ブランド性とあわせて、高い生産性を確認できたことから、今後は「タマカイ」を注力魚種として扱う予定。
また、取得したデータを活用したデータ駆動型による生育環境の自動制御やより高いレベルでのリアルタイム遠隔指導体制の構築をめざす。
今回の成果をもとに、「水産業夢未来プロジェクト」の推進と実現に向けて、都農町漁協など地域の水産事業者等との連携により、完全閉鎖循環式スマート陸上養殖における「タマカイ」の本格的な量産体制の構築、2024年春に竣工予定の加工場の活用および都農町の新たな特産品の商品化・販売の実現、新たな地域ブランドの創出に向けた取り組みを進めるとしている。
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