NTT東日本「触覚と映像を使ったオンライン診療」デモを公開 現場の看護士と遠隔の医師がIOWNでリアル触診 ユカイ工学が協力

NTT東日本は、同社が開催した招待制イベント「地域ミライ共創フォーラム2025」において、NTTの高速通信「IOWN APN」を使い、「触診ロボットの遠隔操作」の展示デモを公開した。
双方向のリアルタイム映像と音声技術で、高精度な力伝達と安定動作を実現する「バイラテラル制御技術」を融合したもの。「臨場感のあるオンライン診療が可能になる」としている。

触診ロボットの遠隔操作のシステム構成図(NTT人間情報研究所 サイバネティック研究プロジェクト)

過疎地域の医師不足、医師の高齢化などの課題により、医療や看護の遠隔化やオンライン診療の研究とシステム開発が進められている。そして、高度なオンライン診療を実現するには「視覚」(映像)や「聴覚」(音)が既に通信での高品質なやりとりが可能になっているが、硬さやシコリなどを判断する「触覚」のシステム化は難しい。今回の展示では、触覚に関連する要素技術やオンライン診療の可能性を示す複数のデモが展示されていた。

そのひとつが、訪問介護に出かけた看護士が機器を使って医師と通信し、看護士がおこなった触診の感覚を医師がオンラインで受け取り、遠隔触診で診察をおこなうというケースを想定したもの。

右側の足の人形を触るとセンサーによる指先の圧力と変位置により柔らかさを推定する「触診代行」。ここで検知した看護士の触覚は、医師が遠隔からディスプレイで数値やグラフで確認できるほか、左の物理的な「触覚伝達」機器(ユカイ工学が技術協力)を使って感じ取ることができる


医師が現場の看護士に触って欲しい部位を指示

医師は通信を通して看護士に「ここを触って欲しい」と指示をする。看護士が患部を触った触覚や反発はデジタル信号に変換され、高速通信を介してリアルタイムで医師のもとに送られる。



なお、医師が指定する部位を現地看護士に的確に伝達することが重要で、そのためには看護士がARグラスを装着し、医師がピンポイントに送った場所が、ARグラスに青い目印で表示され、正確な指示が可能になる。





医師は「触覚伝達(触覚表現)」デバイスで反発を感じとる

医師のもとに送られた信号は、特別な「触覚伝達(触覚表現)」デバイスを使って表現され、医師は反発を感じ取ることができる。この特別なデバイスの開発には、ユカイ工学の技術協力を得た。

遠隔の看護士が触った肌の反発を伝達する、開発初期の「触覚伝達」ディスプレイ(中央の白い箱型)。天頂部の突起が狭い範囲での反発を触覚表現するしくみ

伝達範囲を広くとった開発初期の「触覚伝達」ディスプレイに対して、今回稼働展示していたのは範囲をスポット的に伝達する「触覚伝達」ディスプレイ。医師が指示し、看護士が触った部位の反発を物理的に表現する


IOWN APNを使用すると、反発や硬さを約20ms程度の低遅延に通信できるので、看護士と医師がタイムラグを感じることなく(映像とのズレがなく)、直感的に触覚の共有が可能となる。





腕の触診も正確に伝達

腕の触診をおこなう場合、遠隔の医師が触診したい腕の部位を、現場の看護士に正確に、かつ短時間で伝えるためのARデバイス(スマホアプリ活用)も展示していた。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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