株式会社アトラックラボは2026年8月13日、ロボットAIプラットフォーム「AT-SYNAPSE」を支えるロボット制御システム「AT-ROS」の安全設計について発表した。人と協働するロボットの安全性と信頼性を追求する取り組みだ。
AIの「頭脳」と実機の「神経系」を分離
AT-SYNAPSEは、ChatGPTやClaude、Geminiなどの大規模言語モデル(LLM)をロボットの頭脳として活用し、自然な対話を通じて周囲の状況を理解し、自律的に判断・行動するためのロボットAIプラットフォームである。一方、実際のロボットを安全に動かすには、AIによる高度で柔軟な判断だけでなく、センサー情報の取得やモーター制御、障害物の検知、走行停止などを確実かつリアルタイムに処理する制御基盤が欠かせない。
AT-SYNAPSEにおいてこの実機制御を担うのが、ROS 2をベースとした「AT-ROS」だ。AT-SYNAPSEがロボットの頭脳だとすれば、AT-ROSはセンサーや駆動部をつなぎ、判断を実際の動作へ変換する神経系にあたる。アトラックラボは「安全に関わる制御はAIに依存しない」という考え方のもと、AIによる判断とAT-ROSによる安全制御を明確に分離し、AIの応答状況にかかわらず安全機能が継続して働く制御アーキテクチャを構築している。
開発の背景
近年のLLMは自然な対話能力に加え、画像認識や状況理解、複数の情報を組み合わせた推論など高度な能力を備えるようになった。こうしたAIをロボットに組み込むことで、人が自然な言葉で指示を与え、ロボットが周囲の状況に応じて行動する活用が期待されている。しかしAIによる推論には、通信状況に起因する応答の遅延や、入力情報によって判断結果が変化する可能性がある。そのため人や物の近くで動作するロボットでは、停止や衝突回避といった安全に直結する機能をAIの判断だけに委ねず、独立した制御系によって確保することが重要になる。アトラックラボは無人車両やフィールドロボットの開発技術を生かし、AIによる柔軟な判断を担うAT-SYNAPSEと、実機のリアルタイム制御を担うAT-ROSを組み合わせた。
AT-ROSによる安全設計の特長
AIと安全制御を分離:AIの誤認識や不具合が発生しても、独立した安全制御が機能することでシステム全体の安全性を確保する
センサー情報をリアルタイムに監視:3D LiDARやカメラなどから取得した情報を基にロボット周辺の状態を監視し、障害物を検知した場合には走行を停止する
AIの判断より安全条件を優先:AT-SYNAPSEから動作指示が出されても、安全条件を満たさないとAT-ROSが判断した場合は当該動作を制限・停止する
AIの応答に左右されない安全機能:AIとの通信や推論に遅延が発生しても、安全に関わる制御はAT-ROS側で継続する
ロボットの状態を可視化:バッテリー電圧や車輪の回転数、障害物までの距離などを専用のWebコンソール「AT-SYNAPSE Robot Console」に表示し、開発・検証・保守を支援する
想定する活用分野
AT-SYNAPSEとAT-ROSは、サービスロボットや受付・案内ロボット、工場やプラントの巡回・点検、自律搬送ロボット(AMR・UGV)、災害対応ロボット、ドローン(UAV)・無人船舶(USV)、教育・研究開発、ロボットのPoC(概念実証)といった用途への活用を想定している。機体構成や使用するセンサー、運用環境に合わせたシステム構築にも対応するという。
同社代表取締役の伊豆智幸氏は「AIの進化によって、ロボットは人の言葉や周囲の状況を理解し、より柔軟に行動できるようになった。一方で、AIが高度になることと実機の安全が確保されることは、分けて考える必要がある」とコメントしている。
ロボスタオンラインセミナー情報
「AIロボティクス立国」実現へ ロボット議連が示すフィジカルAI時代の国家戦略
ロボット議員連盟会長であり、自民党経済産業部会のロボティクス戦略プロジェクトチーム座長も務める山際大志郎衆議院議員をお招きして、オンライン対談「AIロボティクス立国」実現へ ロボット議連が示すフィジカルAI時代の国家戦略 を開催します。

2026年、日本政府はAIロボティクスを新たな成長分野として位置付け、「AIロボティクス戦略」を策定しました。この戦略の策定を政治の側から後押ししたのがロボット議員連盟であり、2026年6月には新たな提言をまとめ、官房長官へ手交しています。
ロボット議員連盟が提言に込めた狙い、政府が「AIロボティクス戦略」を策定した背景、米国・中国との競争をどう捉えているのか、日本の強みはどこにあるのかについて詳しく聞きます。
また、産業界、スタートアップ、研究機関は今後どのような役割を担うべきなのか。ロボット産業に携わる人が知っておきたい、日本のAIロボティクス戦略の全体像と、社会実装に向けた具体策に迫ります。
先着で無料ご招待します。詳しくはこちら。
急成長する中国ヒューマノイド市場をデータと政策、日中連携事例から読み解く
ロボスタではオンラインセミナー「日本企業は中国ヒューマノイド産業とどう向き合うべきか 急成長する中国市場をデータと政策、日中連携事例から読み解く」を開催します。

匠新(ジャンシン)は、「日中イノベーションのエコシステム」をつくることを掲げ、日本企業と中国企業、政府機関、大学、投資家、メディアをつなぎ、日中間の事業連携を支援してきた企業。中国ヒューマノイド市場の最新動向とデータ分析、中国イノベーションの現場、日本企業との連携事例、日本企業は中国ヒューマノイド産業とどう向き合うべきか、などについて解説していただきます。
世界をリードする中国ヒューマノイド産業の現在地と、日本企業にとっての連携・参入の可能性を、データと具体的な事例から読み解く貴重な機会です。
先着で無料ご招待します。詳しくはこちら。
「触覚」のAIロボット最新研究と実装の最前線
ロボスタでは、AIロボット実装の鍵を握る最新技術のひとつ「触覚・力覚」をテーマに、オンラインセミナー「ロボットは「触覚」で進化する ヒューマノイド・フィジカルAI時代のハプティクス最前線」を9月17日(木)に開催します。

講演では、「人間の触覚・力覚とは何か」「ロボットに触覚はなぜ必要なのか」といった基礎から、視覚AIとの融合、遠隔操作やテレオペレーションとの関係、医療・介護・製造分野への応用、さらにはヒューマノイドやフィジカルAI時代における触覚技術の役割まで、最新の研究動向を交えながらわかりやすく解説していただきます。
後半は、柔軟ゴムセンサ「e-Rubber」の開発や実証実験、「身体性AI」やロボットへの応用事例等をご紹介。
大学等における最先端研究と、企業による社会実装の両面から、触覚技術の現在地と今後の可能性を深掘りします。ぜひ、ご参加下さい。
詳しくはこちら