ドイツの国鉄運営会社「ドイツ鉄道」は 5,700の駅と 33,000kmの線路で構成されており、西ヨーロッパで最大規模だ。
その一部である Digitale Schiene Deutschland(DSD)は、NVIDIAと協力し、ネットワーク全体で自動列車運行を完全にシミュレーションする、初の全国規模のデジタルツインの構築に着手している。
「GTC 2022」の基調講演でNVIDIAの創業者兼CEOのジェンスンフアン氏は、デジタルツイン「Omniverse」のユースケース事例としてそれを紹介した。
5700の駅と33,000kmの路線をデジタルツインで構築
NVIDIA Omniverseで作成された AI対応のデジタル ツインを使用することで、DSDは、日々の鉄道運行における異常な状況を最適に検出して対応するための、高度な認識および事故防止と管理システムの開発を可能とした。
鉄道ネットワークの最適化に対する先駆的なアプローチにより、DSDはヨーロッパの鉄道システムの未来と産業の発展に貢献しており、 各国でデータプールを共有することで、継続的な改善と将来の車両への展開が可能になり、コストを削減しながら可能な限り最高の品質を実現できる。
完全に自動化された列車ネットワークのビジョンの実現にむけて
DSDは、新しい線路を建設することなくネットワークの容量を増やすことに取り組んでおり、列車が自動化され、互いの間隔を少なくして安全に走行し、ネットワークを介して最適に操舵される強力な鉄道システムの構築に尽力している。
NVIDIAと共に手掛ける、この全国規模のデジタルツインの構築は、鉄道システム全体をフォトリアルで物理的に正確なエミュレーションを作成することを意味し、都市や田園地帯を走る線路、および駅のプラットフォームの測定値や車両センサーなどからの多くの詳細情報が含まれる。NVIDIA Omniverseで作成された AI対応のデジタルツインを使用することで、DSDは、日々の鉄道運行における異常な状況を最適に検出して対応するための、高度な認識および事故防止と管理システムの開発が可能となる。
ドイツ鉄道の一部である DB Netz のLead Perception GroupのRuben Schilling氏は、次のように話している。
DB Netz Lead Perception Group Ruben Schilling氏
NVIDIA テクノロジにより、完全に自動化された列車ネットワークのビジョンを実現し始めることができます。
想定される将来の鉄道システムは、ネットワークの容量、品質、および効率向上を可能にする。これは、乗客と貨物の顧客が満足できるための基盤であり、線路上の交通量を増やし、モビリティ部門の二酸化炭素排出量を削減することにもつながるといえる。
データ、データ、さらに多くのデータ
このように大規模なデジタル ツインを作成するには大がかりな作業が必要となる。たとえば、Siemens JT エコシステム内で構築されたCADデータセットを、DSD の高精細3Dマップおよびさまざまなシミュレーションツールと接続するカスタム構築の3Dパイプラインが必要だ。Universal Scene Description 3Dフレームワークを使用すれば、DSDはデータソースを接続して単一の共有仮想モデルに結合することができる。
ネットワークが現実の世界と完全に同期されているため、DSD は最適化テストと「もしも」のシナリオを実行して、予期せぬ状況への対応など、鉄道システムの変更をテストおよび検証することが可能となる。その他、Omniverseシミュレーションを実行するためのコンピューティング システムである NVIDIA OVX上で動作することにより、DSDは、物理世界からのデータ ストリームの更新によって定期的に改善される永続的なシミュレーションを実行できるようになる。
■【動画】Building Autonomous Rail Networks in NVIDIA Omniverse with Digitale Schiene Deutschland(DSDによるNVIDIA Omniverseでの自律型鉄道ネットワークの構築 / 英語)
将来のコンピュータービジョンを利用したシステムは、ルートの監視と事故認識を継続的に実行し、潜在的な危険を自動的に警告して対応することができる。AIセンサーモデルは、実世界のデータと合成データを組み合わせてトレーニングおよび最適化され、その一部は、Omniverse Replicatorソフトウェア開発キット フレームワークによって生成。 これにより、モデルは、日常の予期しないシナリオに直面したときに、認識、計画および行動可能となる。
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