上尾中央総合病院がアーム1本のみのシングルポート「ダビンチSP」サージカルシステムで前立腺がんの摘出手術を実施 関東初

上尾中央総合病院は、2023年7月に手術支援ロボットの「ダビンチSPサージカルシステム」(ダビンチSP)を使用した前立腺がんに対するロボット支援下腹腔鏡手術を実施した。

「ダビンチSP」は最新モデルで、アームが1本のみのシングルポートシステムが特徴。今回行ったダビンチSPによる手術は関東初となり、上尾中央総合病院は、より低侵襲な手術の提供に繋がり、治療の選択肢を広げるものになるとしている。
なお、手術支援ロボットシステムとはロボットが手術を執刀するのではなく、医師が手術支援ロボットを操作・駆使して、患者にとってダメージの少ない手術を行うシステム。


前立腺がんの摘出はロボット支援手術が主流へ

前立腺がんの根治手術(完全に治すことを目指しておこなう手術)は、前立腺をすべて摘出する「前立腺全摘術」が標準的な術式で、前立腺を精嚢などの周囲の組織とともに摘出し、膀胱と尿道を吻合(つなぎ直す)する。これ以外にも開腹手術・腹腔鏡下手術・ロボット支援腹腔鏡下手術による方法がある。

上尾中央総合病院では患者の身体へのダメージが少なく、安全かつ確実にがんを摘除できることから、2013年10月以降、ほとんどの前立腺全摘術をロボット支援下でおこなっている。
ロボット支援下の前立腺全摘術は健康保険の対象で、高額治療費 限度額適用認定も受けられる場合がある。

サージョンコンソールと執刀医


ダビンチSPによる前立腺全摘術の利点

従来機種の「ダビンチXi」に比べ、ダビンチSPは「切開創(手術のきず)が小さい」ため、「痛みが軽く整容性(傷跡などの美容面)に優れている」という利点がある。

また、体表だけでなく術野(体内の傷)も小さくなり、患部への到達方法を変えることができることなどから、「手術時間の短縮」や「合併症発生の減少」が期待できる。しかし、前立腺がんの病期や前立腺の形状、患者さんの体格などによっては、従来機種(ダビンチXi)の方が適している場合もある。

上尾中央総合病院には、複数名の日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)が在籍しており、これまでもロボット支援手術に熟練した医師たちが患者に最適な治療法を提案してきたが、今回のダビンチSP導入で、その選択肢をさらに増やすことができるようになったとしている。


ロボットアームと助手

従来機種(ダビンチXi)との相違点

ダビンチSP
アーム シングルポート(単孔式)
切開創 1~2か所
カメラ 軟性鏡(関節機能があるため屈曲が可能)のため、角度・方向の自由度が高い。


ダビンチXi
アーム マルチポート(多孔式)
切開創 5~6か所
カメラ 硬性鏡(真っすぐなカメラ)のため、角度・方向はほぼ一定。4本のアームいずれもカメラを接続できる。



執刀中の様子

今後の展望

今後は女性泌尿器科領域(女性骨盤臓器脱)、頭頸部外科領域(中咽頭がん・下咽頭がん・喉頭がんの一部の手術)、婦人科領域(子宮摘出手術)等への展開を予定している。


執刀中の様子

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ロボスタ編集部

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