NEC「次世代AIエージェント」を公開 依頼したい業務を入力すると生成AIが自律的にタスクを分解し、業務の実行まで自動で行う

NECは、業務を自律的に遂行する「AIエージェント」を、2025年1月から順次提供する。2024年11月27日に同社が開催した、研究開発と新規事業における戦略説明と、最新技術をデモ展示する「NEC Innovation Day 2024」内で発表した。2025年1月にリリースを予定している。

「AIエージェント」を紹介するNECの執行役 Corporate EVP 兼 CTO 西原 基夫氏(左)と、Corporate SVP 兼 AIテクノロジーサービス事業部門長 兼 AI Research Officer 山田 昭雄氏

また、展示ブースでは実際に、この「AIエージェント」が動作しているデモも公開した。NECは、生成AI関連事業において、2025年度末までに約500億円の売り上げを目指す。



NECの「AIエージェント」の特長

この「AIエージェント」は、ユーザーの質問に対して意図を理解した回答を返すだけでなく、生成AIをはじめとする様々なAIやITサービスと連携させることができ、高度な専門業務を自動化し、生産性向上の実現を目指すものとなっている。


例えば、ユーザーが依頼したい業務を入力すると、AIが自律的にタスクを分解し、必要な業務プロセスを設計する。さらに、それぞれのタスクに最も適したAIやITサービスも自律的に選択、業務を自動で実行する。
第一弾として、経営計画や人材管理、マーケティング戦略など、社内外の情報を包括的に検索し、意思決定が求められる業務のプロセスを自動化するサービスを提供していく考えだ。

NECの「AIエージェント」の実行例。製造業のDX担当者が「キャリア採用者の育成戦略を作りたい」と「AIエージェント」に相談。「育成戦略の概要」とその内容、その提案に至った多角的なプロセスを明示している。

NECの「AIエージェント」開発には、同社のLLM(大規模言語モデル)「cotomi」の進化と、同社独自の「図表文脈理解機能」による高精度な図表の理解が関わっている。どちらも同日に発表された先端技術で、これにより、従来のチャットボット機能を超えて「業務プロセスの設計」や「育成計画書の作成」が現実的なものになった。

同日、「cotomi」の進化版を発表。「世界最高水準の精度と速度を更に強化」「根拠を提示することで、信頼性向上」「自己学習でプロンプト作成負担を軽減」などが強化され、その内容も展示ブースではデモを交えて解説された。関連記事「NECの大規模言語モデル「cotomi v2」vs「GPT-4o」対決!精度と速度を向上した新版を12月リリース、GPUの演算効率を2倍に向上

■NECが最先端のAIエージェントを公開


実践的な業務に生成AIを活用する最適解を追求

様々な企業や公共機関では既に、生成AIを活用した業務の効率化や自動化など、業務変革に向けた取り組みが始まっている。しかし、実際の業務で生成AIを活用する場合、意図に沿った適切なプロンプトを作成したり、複数のAIを組み合わせたりしないと回答精度を上げられないといった課題が顕在化している。
そのため、一般的なアプローチとして、業務ごとに最適なAIを構築する手法が主流だが、それには高度な専門知識や時間、コストが課題となる。

このような状況を背景に、NECの「AIエージェント」は回答を提案するだけでなく、様々なAIやITサービスなども連携して、業務を自律的に遂行する、業務に更に踏み込んだ「AIエージェント」を開発した。


今回発表されたNECのAIエージェントでは、ユーザーが依頼したい業務を入力すると、NECが開発した生成AI「cotomi(コトミ)」が自律的にタスクを分解する。更に、必要な業務プロセスを設計、それぞれのタスクに最も適したAIやITサービスなどを選択し、業務の実行まで自動で行う。それによって、社内外の情報を包括的に検索し、意思決定が求められる業務のプロセスまで自動化するとしている。

例えば、「キャリア採用者の育成戦略を作りたい」と入力した場合、指示内容から最終成果物を育成計画書と設定し、社内外の情報収集や分析、プログラムの生成・実行など、複数のタスクに分解する。

高度な専門知識がないユーザーでも依頼したい業務を「AIエージェント」に入力するだけで成果が得られるようにする。経営計画や人材管理、マーケティング戦略など、企業経営や業務運営に関わる高度な専門業務において、大幅な効率化が期待できる。





価値創造モデル「BluStellar」

NECはDX分野において、ビジネスモデル、テクノロジー、組織・人材の3軸で、戦略構想コンサルティングから実装に導くオファリングなど、End to Endのサービスを提供している。さらに、従来型のSIerから「Value Driver」への進化を目指し、その価値創造モデルを「BluStellar(ブルーステラ)」として体系整理。業種横断の先進的な知見と最先端テクノロジーによりビジネスモデルを変革、社会課題とユーザーの経営課題を解決に導く、としている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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