海外の支援者が日本の2倍超!大人気の「猫舌ふーふー」先行体験イベント開催 けなげに頑張るプロトタイプも公開

ユカイ工学が開発した、熱いものを冷ましてくれる小さなロボット「猫舌ふーふー」のクラウドファンディング(クラファン)が開催中だ。熱い食べものや飲みものを冷ますことに特化している。


「猫舌ふーふー」は三色カラー展開でクラファンに登場。ミルク/さくら/チョコ

ユカイ工学と連携パートナーの東洋製罐は、「クラウドファンディング達成記念イベント」を開催した。



開始後わずか40分で目標金額を達成

クラファンは2025年4月15日(火)に国内向けと海外向けに合わせて3サイトで開始し、開始後わずか40分で目標金額を達成した。海外向けのクラファンで2362%(支援者が1365人)、国内向けで860%(支援者686人)に達している(2025年5月19日時点)。クラファンの期間は5月29日(木)まで。

日本国内の居住者用クラファンサイトのひとつ「Kibidango(きびだんご)」の画面


海外向けクラファンが国内向けの約2倍の盛り上がり

この数字は今までユカイ工学がクラファンをおこなってきた様々なプロダクトを超える好調ぶりだという。また、海外向けクラファンが国内向けより達成率や支援者数ではるかに上回っているのも特筆すべき点といえるだろう。


猫舌は、日本特有の悩みではなく、グローバルな悩みなのだ。2025年1月に米国で開催されたCESで反響を呼び、海外のTVや新聞、YouTuberなどメディアに取り上げられたことも、海外で好調の一因になっている。

海外居住者向け「Kickstarter」が予想を遙かに上回る好調ぶり


「猫舌ふーふー」先行体験イベントを開催

ユカイ工学は、5月19日に「クラウドファンディング達成記念 「猫舌ふーふー」先行体験イベント」を都内で開催した。同社CEOの青木俊介氏、CMOの冨永翼氏、CDOの巽孝介氏、デザイナーの樫村京氏、そして東洋製罐GHDの三木逸平氏が登壇した。

ユカイ工学株式会社のCEO、青木俊介氏

和気あいあいとしたトークセッションも開催。左からユカイ工学CDOの巽氏、CEOの青木氏、販売連携パートナーの東洋製罐GHDの三木氏

CEOの青木氏は「”猫舌”ってアメリカ人に通じないのではないか?という懸念があった。英語で言うと「ヒートセンシティブ」、”暑いのが苦手”っていう、そのまんまの表現をもってCESで展示したところ、外国の人にも刺さってすごい反響を呼びました」というエピソードを紹介した。


海外支援者はアメリカが圧倒的に多い

クラファンで支援を表明している人を居住地域別に見ると、アメリカが圧倒的に多く、ドイツ、イギリス、シンガポール、カナダ、オーストラリア、フランスと続く。ドイツの陶器メーカーのローゼンタール社とコラボして「猫舌ふーふー」とマグカップのセットもクラファンでは用意した。都市別に見ると、シンガポール、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスと続いている。


アイディア出し社内イベント「メイカソン」がきっかけ

「猫舌ふーふー」の企画は同社のアイディア出し社内イベント「メイカソン」で生まれた。

ユカイ工学のメイカソンの様子

発案したCMOの冨永氏は「数多くの人が、熱いご飯を食べるときに「ふーふー」するあの行為を、世の中からなくすことはできないか?」と考えた。そして、1万人以上を対象にしたアンケートで「約半数(47%)が猫舌」というウェザーニュースの衝撃的な調査結果を見て、企画が間違っていないという手ごたえを感じた」という。

ユカイ工学株式会社のCMO、冨永翼氏

そして、最初に描いた企画書がこれ(下)。殴り書きのような1枚の企画絵から「猫舌ふーふー」はスタートした。



東洋製罐と連携、製品化の検討を開始

「猫舌ふーふー」の実現のため、同社は創業107年、包装容器の製造販売で知られる東洋製罐に、この殴り書きのような1枚の企画絵を持ち込み、実用化を検討した。
東洋製罐は、飲料の缶、ドリンクやシャンプーなどのボトル、ガラス(瓶)、紙と、容器の4大素材を網羅している大手企業だ。

東洋製罐グループホールディングス株式会社 イノベーション推進室長 三木逸平氏

大量のノウハウを持つ東洋製罐からのフィードバックを受けて、「猫舌ふーふー」のプロトタイプ(乾電池仕様)が誕生した。


目や動く耳があり、一生懸命フーフーしながらも時折ぜぇぜぇ言いながら息を整えて頑張る小型のロボットになった。

インパクトがなかなか凄い「猫舌ふーふー」のプロトタイプ。殴り書きの企画絵にある「たまにぜぇぜぇいう時もある」が機能として組み込まれている。途中で「ぜぇぜぇ」言って頑張ってフーフーしている感がいじらしい!! なお、プロトタイプは作動音が大きいので、製品版では改良して静音性を向上させた。

■プロトタイプ

■静音性を向上させた改良版


製品化までの3つの課題

プロトタイプのそれはそれで愛らしいのだが、製品化までの課題を3つあげた。ひとつは「乾電池の仕様で、コストが下げられない」、そして「外側を洗うなどの衛生面での課題を解決したい」「外観デザインに他社IPなどのコラボ向けの余白がない」という点だった。

この課題を解決するために試行錯誤していると「猛暑の影響からハンディファンが大量生産」されるようになり、コスト削減の道筋が見えてきた。また、ファンの機構部とデザインの外装部分を分け、シリコン製にすることで外装部分だけ丸洗いができるように変更した。また、「猫舌ふーふー」に顔には目や鼻などのデザインをあえておこなわないことで、将来的なコラボの余白を持たせることにしたという。



デザインで苦戦と工夫

製品版の開発に向けて、デザインにも多くの課題があった。デザイナーの樫村京氏は、苦戦したポイントとして「口の形」「通風口の形」「姿勢」の3点をあげた。


「そもそもネコはフーフーできる口の形をしていない」という絶望的な課題を紹介し、会場の笑いを誘った。


その後、口のデザインをネコ寄りにするか、ヒト寄りにするか、「いっそのこと丸い穴」を試してみたら不気味だった、と続けた。


また、正面から見るとネコ、横から見るとヒトっぽいデザインを採用したことも紹介した。



トークセッション「持ち込んだ企画書はあのポンチ絵?」

イベントの終盤にはトークセッションがおこなわれた。東洋製罐にはじめてこの企画が持ち込まれた時の社内の反応をきかれると三木氏は「1/3ぐらいは”めっちゃ面白い”という反応、1/3ぐらいは”これはちょっと”という反応、そして1/3は”何言ってるかわかんない”という反応だった」と答え、会場は笑いに包まれた。


「その中でも、特に偉い人からは”この企画は絶対に許さない”という拒否反応もありました。でも、私は新設されたイノベーション推進室にとって最初の仕事であり、ランドマーク的な存在にしたいという思いがあって、結果的に製品化までこぎつけることができました」と続け、東洋製罐社内でも異端の企画だったことを示唆した。


また、「ベンチャー企業と連携するのも初めてでした。それまで経験してきた大手企業との連携では立派なプレゼン資料をプロジェクタに表示して企画が発表されていましたが、ユカイ工学さんが持ってきた資料は例の手書きの企画絵で(笑)、同じようなアイディアが全部で5種類、5ページが綴られていて、正直、”えっ、これ? しかも紙で? ” って、びっくりしました(笑)」と当時のエピソードを紹介、「でも、結果的にこの絵の強すぎるインパクトが印象に残り、猫舌ふーふーの企画を進めたい、と感じました」と続けた。



クラファンは2025年5月29日まで

クラファンは2025年5月29日 23時59分まで。価格は、アーリーバード(超早割価格)4,500円より(税込・送料込)。3つのクラファンサイトで支援の申込みができる。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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