日本電気(NEC)と、ICT機器の「保守サービス」を提供しているNECフィールディングは、量子コンピューティング技術を活用した「保守部品の配送計画立案システム」を構築した。本年10月より東京23区内における保守部品配送を対象に本格導入する。これにより、毎日2時間かけて行っている「翌日分の保守部品の配送計画立案作業」が、10分の1となる、わずか12分に短縮でき、大幅な業務効率化が達成される見込み。(冒頭の画像はNECの公式サイトより引用:NEC Vector Annealing サービスのSX-Aurora TSUBASAのイメージ:例)
複雑で大規模な保守配送業務の計画立案作業を10分の1に短縮
NECフィールディングは、NEC製・他社製のICT機器、および非ICT機器に故障が発生した際、カスタマエンジニア(CE)が拠点から顧客先の現場に出向いて保守作業を行うサービスを提供している。CEのスキルや到着時間をもとに出動計画を作成し、交通事情を加味しながらパーツセンターから保守部品を配送する。
しかし、緊急対応や定期保守、時間指定の対応など様々なオーダーが存在する他、配送エリア、部品の種類・サイズ、トラック・バイクなどの配送手段の組み合わせが膨大になり、配送計画の立案作業に時間がかかることに加え、配送コストをおさえた効率的な配送計画を立案できる人材が限られる、といった課題を現状まで抱えている。
大規模な組合せ問題を超高速処理する「NEC Vector Annealingサービス」
そこで両社は、量子コンピューティング技術により、大規模な組み合わせ問題の超高速処理を実現する「NEC Vector Annealingサービス」(https://jpn.nec.com/nec-vector-annealing-service/index.html)を活用した実証実験を本年2月より実施した。
実証実験の結果、量子コンピューティング技術を活用し立案した配送計画が熟練の作業者と同等程度の内容であることが確認できたため、第一段階として立案作業効率化・属人化解消に向け約50件の翌日分の配送計画への適用に向け本システムを開発し、このたびの本格導入に至った。
このシステムは、配送計画立案の作業時間を10分の1に短縮するだけでなく、適用する業務範囲や対象エリアの拡大により配送車の削減や距離の短縮化を実現し、配送コストを3割程度削減できる見込み。今後両社は、保守部品の配送計画の立案に関わる作業者の負荷軽減に加え、配送効率の向上によるコスト削減やCO2排出量の低減を目指す、としている。
生産計画の最適化や金融領域における機械学習の精度向上などにも応用
量子コンピューティングは、複雑化する社会課題に対し、これまで解けなかった問題を高速で解くことができると期待され、注目が高まっている。NECは生産計画の最適化や金融領域における機械学習の精度向上など、様々な領域での技術活用に取り組んでいるという。同社は企業や大学による量子コンピューティングの利活用を推進し、社会課題の解決に貢献していく考えだ。
なお、この取組みについては、NECグループが開催するオンラインイベント「NEC Visionary Week 2022」の9/16(金)のプログラムで紹介される予定。
https://event.nec.com/nvw2022
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