アスラテックがロボットのハードウェア事業を拡大 生成AIの効率的な学習、移動や力触覚、バルーンロボットの技術開発にも注力

アスラテック株式会社は設立から10周年を迎えた。11年目にあたり、今後の指針を発表、2024年7月よりバイラテラルアームやバルーンロボットなど、ロボットハードウェア領域における事業を拡大する。更に、生成AIやAI学習と連携した開発にも注力することを発表した。
また、「ロボット開発パートナーシップ制度」を開始し、他社との連携も強化、第一弾としてロボティズとパートナーシップの締結を発表。
Preferred Roboticsの自律走行ロボット「カチャカプロ」の取り扱いもおこない、アスラテックの独自技術と組み合わせて業務に特化したシステム提供もしていく。


独自のロボット制御システム「V-Sido」

アスラテックは、独自のロボット制御システム「V-Sido(ブシドー)」開発で知られる。チーフロボットクリエイターに吉崎航氏を擁し、V-Sidoは横浜の「動くガンダム」や、超時空要塞マクロス展の「マクロス変形ロボ」、まるでSF映画に出てきそうな巨大な4人乗り4足歩行型ライド「SR-02」などに採用実績がある。

多くのファンに感動を届けた身長18mの横浜の動くガンダム。「V-Sido」で制御されていた。関連記事「横浜の動くガンダム、アムロのセリフでお別れを告げる 最後の起動実験を花火とドローンショーで飾った「GFYグランドフィナーレ」」©創通・サンライズ

「V-Sido」は、リアルタイムにロボットを動かすことができる。急な衝撃を受けたときや不安定な足場でも倒れにくい安定性を備える。形状や大きさ、アクチュエーターの種類などを問わず、さまざまなロボットに適用できるほか、いろいろなデバイス(インターフェース)からロボットを動かす汎用性の高さにも特長がある。


生成AIとの連携、モータ関連部品の安定的な入手が鍵

同社によれば、V-Sidoを中核にした事業を更に進めるにあたり、近年は「生成AIの進化に伴ってAI領域と連携」する試みが増加する傾向にあるとしている。また、同社は自律走行型配送ロボット『RICE』(ライス)などを事業化してビジネス展開もしているが、アクチュエータ(モータ)関連部品の入手が年々難しくなっているという。

こうしたことを背景に、部品メーカーとのアライアンス、AI=V-Sido連携ロボットの開発、新規移動ロボットの運用サービスの展開など、ロボットハードウェア領域の事業を今後はより一層拡大していくことを表明した。


AI連携可能なバイラテラルアームの開発と販売

同社はまず、近日中にAI連携可能なバイラテラルアームの開発および販売を開始する。
トルクフィードバックのあるロボットアーム駆動システム「V-Sido Bilateral(ブシドー・バイラテラル)」は、アスラテック独自のロボット制御システム「V-Sido」をベースに、バイラテラル(力触覚を伴った双方向性の制御)機能に特化したソフトウエアとして開発。操縦者はロボットにかかる外からの衝撃や物体を把持することで、より直感的にロボットを動かすことができるほか、自然にロボットへかかる負担が小さくなる動作を作ることができる。

ロボットアーム駆動システム「V-Sido Bilateral」のイメージ

「V-Sido Bilateral」の活用例「V-Sido Bilateral MUGENYOYO Edition」。タカラトミーから発売されている、電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイエンターテイメント「MUGENYOYO/ムゲンヨーヨー」を力触覚搭載のロボットで操作

また「V-Sido Bilateral」は、効率的にAI学習のためのデータを取得することが可能となる。低コストでのロボット開発を目指すGoogle DeepMindの「Mobile ALOHA」などにも応用できるという。

なお、ロボット販売に向けた施策の一環として、サーボモーターのメーカーなどハードウェア企業とのロボット開発パートナーシップ制度を開始した。


「ロボット開発パートナーシップ制度」を開始

「ロボット開発パートナーシップ制度」はアスラテックと関係企業がより深い協力関係を結ぶことで、開発における技術情報の相互共有や安定的な部品供給などを実現し、1台でも多くのロボットをいち早く世の中に提供するための取り組み。第一弾として株式会社ロボティズとパートナーシップの締結を発表した。

ロボティズは、1999年に韓国で設立したROBOTIS社の日本支店として、ロボット用アクチュエーターの国内販売を手掛ける企業。ROBOTIS社が製造・販売している「DYNAMIXEL」シリーズは、世界各国の大学や研究機関などでロボット開発に使われており、ロボット用アクチュエーターのデファクトスタンダードとなっている。

アスラテックは過去にも、ロボティズの協力のもと、「Dynamixelサーボ」「ROBOTIS OP2」、「OpenMANIPULATOR-X」などのV-Sido対応を行なっている。また、前述の通り、2022年に開催された「超時空要塞マクロス展」のメイン展示「マクロス変形ロボ」はDYNAMIXELを使用し、V-Sidoで制御することによりアクチュエーターの損耗率・故障率を低減し、展示期間の約4か月間、部品交換を行うことなく運用することに成功した。

「超時空要塞マクロス展」のマクロス変形ロボにも「V-Sido」が使われた。関連記事「「超時空要塞マクロス展」終幕!全長70cmマクロス戦艦からロボットへ変形デモ写真を公開、合計4,600回トラブルなし!2023年春に横浜で公開」©’82,’84,’87,’92,’94,’95,’97,’02,’18 BW ©’07 BW/MFP・M ©’09,’11,’21 BW/MFP ©’12 BW/MFB7P ©’15,’17,’21 BW/MDP


触れあえるバルーンロボットの本格展開

株式会社ピアニジュウイチとアスラテックが共同開発したバルーンロボット技術を用いて作成したロボットの本格的な販売と運用も開始する。バルーンロボット技術を用いたロボットは、2024年4月に株式会社わかさ生活のキャラクターのロボットとして先行販売。多くのクライアントからの引き合いがあるという。同社はバルーンロボットの製造・販売体制を強化して拡販を進める考え。

■ バルーンロボット試作動作まとめ


自律走行ロボット「カチャカプロ」の取扱を開始

同社はハードウェア製品として、自動搬送ロボット『RICE』を取り扱ってきた。それに加えて、新たに2024年7月より株式会社 Preferred Roboticsの自律走行ロボット「カチャカプロ」の取り扱いを開始する。

アスラテックが独自に開発したアプリで動くPreferred Roboticsの自律走行ロボット「カチャカプロ」

「RICE」など他の移動ロボットでの開発や運用の知見を生かして、エレベーター連携なども可能な「カチャカプロ」向け独自アプリを開発する。「カチャカプロ」と独自アプリを組み合わせたソリューションを販売していく。なお、今後も「カチャカプロ」にとどまらず、取り扱いロボットの拡充を図る。
また、「RICE」や「カチャカプロ」など複数種類のロボットを同一のインターフェイスで操作でき、一元的に運用・管理できるアプリケーションプラットフォームの開発も進めていく。
関連記事につづく「アスラテックが自律移動ロボット「カチャカプロ」取扱い開始 独自技術の専用アプリを業務別に開発、エレベータ連携にも対応

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ロボスタ編集部

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