花王株式会社は、2024年7月に、少量多品種を生産する豊橋工場の次世代倉庫内の現場環境において、日本で初めて「自動運転フォークリフトによるトラックへの積み込み作業の実用化」に成功したことを発表した。株式会社豊田自動織機との協働により実現した。
2024年10月には本格導入を開始し、日常的に稼働を始める予定。生産工場から次世代倉庫内への製品入庫から出庫までに加え、トラックへの積み込み作業までを自動化することにより、今後の業務効率化や労働力不足の解消に取り組む。
次世代倉庫の完全自動化に向けた自動運転フォークリフトの実用化
豊橋工場では、ヘアケア・スキンケアなど少量多品種の製品を生産している。2023年3月に次世代倉庫が完成し、工場から製品を入庫、仕分け、出庫するまでを自動化することにより、柔軟な物流体制への対応を進めてきた。しかし出庫後のトラックへの積み込み作業は、荷物やトラックの異なる規格への対応や停止位置の誤差調整、長距離輸送に耐えられる荷崩れ防止の養生などが必要なことから、人の経験を活かしたフォークリフト運転技術が不可欠とされてきた。
そこで花王では、積み込み作業の自動化に向けて、2021年より豊田自動織機と協働を開始。2024年7月に、自動運転フォークリフトの実用化に成功した。試験環境ではなく、現場での実際のオーダー・輸送を伴う導入は、日本で初めてとなる(豊田自動織機調べ)。
実用化に成功した自動運転フォークリフトは、同年10月に本格導入し、日常的に稼働する予定。これにより製品入庫からトラックへの積み込みまで完全自動化された倉庫が実現する。
AIとトラック荷役対応自動運転フォークリフトによる自動化のしくみ
今回は、豊田自動織機が開発した「トラック荷役対応自動運転フォークリフト」を採用した。これは、3D-LiDARを用いてトラックの位置を高精度に検出、ガイドレスでの自動運転に加え、AIを搭載することで、画像認識とディープラーニングによるマーカーレスでのパレット位置や姿勢検出ができるシステムを開発。荷役位置を自動で判断しながらトラックまでのアプローチ走行経路を自動生成、トラックの停車位置や積荷の姿勢が一定でない状況下においても荷役の自動化が可能となった。
花王では、自動化をかなえるロボットフレンドリーな倉庫環境の構築と、製品入庫からトラックへの積み込みまでをスムーズに自動化するオペレーション設計を行なった。さらに、トラック輸送にも対応した業務プロセスの構築や倉庫内の設備を制御するITシステム「Warehouse Control System」(WCS)との連携を行なった。
豊田自動織機の技術をもとに、花王の次世代倉庫の環境にいち早く導入するための仕様検討を両社で行い、今般の実用化に至った。今後もさらなる効率化をめざした協働を引き続き続けていく考え。
花王は「自動運転フォークリフトは次世代倉庫のみならず、国内外の花王グループの生産・物流拠点への導入も検討していきます。業界内でも広く活用されるよう知見を広げていくことにより、社会課題となる、労働力不足や能率的で柔軟な働き方への対応を進めてまいります。」とコメントしている。
「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」構想
物流の「2024年問題」を背景に、物流業務の効率化と自動化の必要性が高まっている。花王では、多様化するニーズに対応した特徴ある商品を、必要な量だけ届けることで、資源や環境への負担が少ない、循環型社会に貢献するESG視点での「よきモノづくり」に取り組んでいる。
豊橋工場では「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」構想を推進しており、生産・物流機能一体型運営による無駄のない製品の供給や、リードタイムの短縮、物流コストの低減、CO2排出の抑制を図る。さらに、自動化を進めることにより、労働環境の改善や、能率的で柔軟な働き方へ今後も取り組んでいくという。
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