家庭用ロボット開発のJibo社が2度のレイオフを実施 話題のロボットがなぜ苦境に?

家庭向けソーシャルロボットとして注目を浴びてきた「Jibo」を開発する米・Jibo Inc.が苦境に立たされている。レイオフによりコストを削減し、改めて資金調達を行っていく予定だという。本記事では、そんなJibo社の歩みを振り返りつつ、苦境に立たされている理由を探っていく。






Jibo社の歩み

会社設立と資金調達


Jibo Inc.設立されたのは2012年。MITで人工知能を専攻していたシンシア・ブリジール氏が創業した。その後2014年7月にクラウドファンディングサイト「Indiegogo」で目標額の22倍以上となるおよそ4億円を調達。アメリカだけでなく、日本でも話題となった。

またその後、複数の日本企業からの出資も含め、総額約7,300万ドル、日本円でおよそ80億円もの資金調達も行なっている。


2017年9月 Jibo、出荷開始


2017年9月にようやくクラウドファンディングで先行購入したユーザーにJiboが出荷された。予定から2年以上遅れての出荷となった。同年10月から、アメリカとカナダでJiboの販売をスタート。価格は899ドル、日本円でおよそ99,000円だった。


2017年12月 1度目のレイオフ


2017年12月に、レイオフを実施。この時点で約100名の従業員を抱えていたそうだ。解雇された人数は明らかにされていない。


CEO交代


2017年12月、Jibo社のCEOが交代した。Steve Chambers氏はCEOからExecutive Chairman(会長)へ。Brian Eberman氏が、CTOからCEOになった。


2018年6月 2度目のレイオフ


そして今年6月、さらなるレイオフを実施したようだ。「追加の資金調達に向けて、大幅な人員削減やコスト削減策を実施している。」と公式に回答したJibo社。

カリフォルニアにある第2オフィスはすでに閉鎖されているという。



Jibo閉鎖と表示されている。


もちろん、これがJibo社にとっての次なる一歩であることは間違いない。これからさらに資金調達を行い、その資金をJiboの魅力と訴求力を高めるために使うことができれば、自ずと道は拓けていくはずだ。しかし、海外メディアでは、これら一連の流れを「うまく行っていない」と表現している。



Jiboがうまく行っていない理由

THE ROBOT REPORTではJiboがうまく行っていない理由を4点あげている。それぞれご紹介していく。

1. 出荷の遅れ

クラウドファンディングの出荷予定から、実際の出荷が大幅に伸びてしまったこと。2年以上出荷が遅れたことで、市場の変化やユーザーの気持ちなどに変化が訪れているはずだ。


2. 海外オーダーのキャンセル


最初は国の制限なくオーダーを受けていたが、2016年8月に米国・カナダ以外のオーダーをキャンセルした。これにより出荷されなくなった国のお客をがっかりさせた。


3. より低価格・高機能な競合プロダクトの登場


Jibo発表から発売までの間に、「Amazon Echo」や「Google Home」といった低価格のスマートスピーカーが市場に参入し、その普及を一気に進めた。


またスマートスピーカーは、最近ではディスプレイ搭載モデルも登場しているため、Jiboのデザインにも近づいてきている。


4. 安価なコピー商品の登場

上記のロボットは、一見するとJiboのよう。胸にLEDがあるので、別のロボットだということがわかる。

クラウドファンディングサイトで公開されていたJiboのコンセプト動画を元に、中国で類似コピー製品が先に販売されてしまった。


EBGBOTのロボット。価格は4,899人民元、日本円でおよそ81,600円。

すでに中国では模倣を超えて、Jibo風のパンダロボットまで登場している。


家庭向けロボットはまだこれから


Jiboに限らず、新しい家庭用ロボットを各社が開発中だ。THE ROBOT REPORTによれば、2060年までに米国で9,800万人に達すると予想される高齢化市場の需要の増加によって、ソーシャルロボット市場は2023年までに5億ドル以上に拡大すると予測されている。

2019年にはAmazonが家庭向けロボットを発表するという情報がBloombergによって報じられたaiboは販売好調で、話題のGROOVE Xの「LOVOT」の発売は来年に迫る。他にもまだまだ多くの会社がステルスでロボット開発を進めていることだろう。

家庭向けロボットの勝者はどこになるのか。難しい反面、勝った時の見返りは随分大きそうだ。

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中橋 義博

1970年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学時代、月刊ASCII編集部でテクニカルライターとして働く。大学卒業後、国内生命保険会社本社において約6年間、保険支払業務システムの企画を担当。その後、ヤフー株式会社で約3年間、PCの検索サービス、モバイルディレクトリ検索サービスの立ち上げに携わる。同社退社後、オーバーチュア株式会社にてサービス立ち上げ前から1年半、サーチリスティングのエディトリアル、コンテントマッチ業務を担当する。2004年に世界初のモバイルリスティングを開始したサーチテリア株式会社を創業、同社代表取締役社長に就任。2011年にサーチテリア株式会社をGMOアドパートナーズ株式会社へ売却。GMOサーチテリア株式会社代表取締役社長、GMOモバイル株式会社取締役を歴任。2014年ロボットスタート株式会社を設立し、現在同社代表取締役社長。著書にダイヤモンド社「モバイルSEM―ケータイ・ビジネスの最先端マーケティング手法」がある。

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