NVIDIAはCES 2023向けに特別講演の動画を公開した。日本語字幕付きで閲覧することができる。
特別講演動画の主なトピックは「RTXグラフィックスの進化」「Omniverseによるデジタルツインとシミュレーション」「AIによる自動運転や安全運転支援の開発とシミュレータ」等。多数の導入事例が具体的に紹介され、日本企業のTelexistenceがファミリーマートに導入している遠隔操作ロボットのデジタルツインも紹介されている。メルセデスが生産工場の計画や運用の効率化にデジタルツインの「Omniverse」を導入したことも発表した。
■CES 2023: NVIDIA 特別講演(日本語字幕ON可)
RTXグラフィックスの進化
2022年にゲーミング業界は更に発展し、PCゲーマーは2000万人増加したという。2019年から約1億人の増加で市場は拡大を続けている。eスポーツの視聴時間も前年比で40%増加。日本のeスポーツはほとんど注目されていないが、世界的なストリームに乗り遅れている状況だ。
NVIDIA「Studio」と「Omniverse」
AIはグラフィックスを2D中心から3D中心へと進化させ、リアルな画像や映像はゲームの世界だけでなく、シミュレーションやデジタルツインでの活用が進んでいる。
そのプラットフォームが「Omniverse」だ。デザイナーやプロデューサーなどクリエイターの協業を支援し、AIツールを駆使したリアルなシミュレーション空間を生成ことができる。
ロボットとシミュレーション、「Isaac SIM」と「Omniverse」
シミュレーションとデジタルツインはロボティクスにも重要なツールとなりはじめている。Isaac SIMでは複数台のロボットをデジタルツインの仮想空間でAIモデルをトレーニングし、不具合やトラブルを検証した上で、実際の物理的なロボットに反映して稼働させるワークフローが定着していくだろう。また、機械学習についてはTAOツールキットを使って転移学習することで、トレーニング期間を短く効率化することも可能になる。
ビデオでは、Amazonやドイツ鉄道など大手海外企業の導入事例のほか、日本のTelexistenceが日本のコンビニ(ファミリーマート)で数百台を導入した遠隔操作ロボットのデジタルツイン映像が紹介されている(タイムライン34分の位置)。
「Isaac SIM」ではアップデートの最新機能も紹介されている。
自動運転や安全運転支援
自動運転や安全運転支援等にGPUが活用されていることはもこれまでロボスタでも多く取り上げてきたが、NVIDIA DRIVEプラットフォームや「Thor」は、自動運転のミドルウェア、開発キット、車載コックピットシステム、自動駐車など多くの技術に関与している。動画では、従来は、多くの1台の自動車に約100基のコンピュータが搭載され、シートやウィンドウ、パーキングなどそれぞれの役割のために制御されてきたが、これらをできるだけ統合して一元管理する方向を目指してシステムが開発されている。
同社は、EV(電気自動車)と自動運転に向かう自動車開発をこれらのプラットフォームが支えていく考えだ。また、動画の後半では、「GeForce NOW」やストリーミングプラットフォームと連携し、車内で高精細なゲームを楽しむ体験の提案と、それを推進するパートナー企業も紹介されている。
メルセデスが生産工場にデジタルツインを導入
そして、最後にデジタルツインをメルセデスが生産工場に導入したことを紹介(43分の位置より)。既にBMWが採用し運用してきたが、メルセデスもデジタルツインによって生産と計画の効率化を進めていくことになる。
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NVIDIA 公式サイト
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。