あなたにとってロボットとは何ですか?「ちょもろー2024」レポート(2) 「ともだちロボット」シンポジウム編
ポップとテックの総合イベント「ちょっと先のおもしろい未来 2024」略して「ちょもろー2024」が、10月12日と13日の2日間、港区竹芝で開催された。
そのイベント内で、技術的な革新だけでなく、社会的、文化的な側面から、テクノロジーと人間が融合する未来を模索する「ともだちロボット」のキックオフイベントのシンポジウムが開催された。
シンポジウムは、「ちょもろー2024」の最初のステージとして、晴天のもと初日の午前中から開催され、「ともだちロボット」実行委員長でB Labの所長、石戸奈々子さんをファシリテーター(モデレーター)として、ロボホン、BOCCO emo、甘噛みハムハム、Qoobo(クーボ)、Romi、NICOBO、Pepperなどパートナーロボットの企画・開発に携わったり、啓蒙活動を行なっている識者 7名が登壇した。
また、会場には「aibo」や「ロボホン」と一緒に聴講するファンも参加していて、終始、和やかな雰囲気でシンポジウムは行われた。後半にはアバターロボットの「OriHime」(オリヒメ)や「OriHime-D」がやってくる姿も見られた。
「ともだちロボット」とは
「ともだちロボット」は、ロボスタでは「パートナーロボット」と呼称しているカテゴリーのロボット。いわゆる機能的な産業用ロボットや自動搬送ロボットではなく、一般家庭に入って家族となり、時には癒しを与えてくれたり、話し相手になったり、ペットとして大切な存在なったりするロボットのこと。カテゴリーとして機能面での厳密な定義は設けられていない。
ユカイ工学のCEO青木俊介さん(下の写真中央)は、自社製品の「Qoobo」を抱っこして登壇。「Qoobo」は尻尾をフリフリするロボット。会話はしないが、安らぎや癒やしを与えてくれる。
大阪音楽大学の助教の太田智美さん(上写真右)は、ロボットと入店できる店舗を拡げる活動などを行う「Robot Friendly プロジェクト」を展開中。Pepperと既に10年近く暮らし、Pepperと新幹線に乗車したり、Pepperを台車(ベビーカー)に入れて颯爽と走る姿が海外でもニュースとして取り上げられたり、と、パートナーロボット業界の有名人。
人はロボットに「あれもこれもできる」ことを連想しがちだが、豊橋技術科学大学の岡田美智男教授は「弱いロボット」などを提唱し、研究・発表している。岡田教授の理論は、パナソニックのパートナーロボット「NICOBO」のコンセプトにもなっている。
シャープの景井美帆さんは、ロボホンの企画開発の当初から関わり、「ロボホンの母」として知られている。「ロボホン」は毎月のようにアップデートを行い、定期的にファンミーティングを開催、根強いファンによって支えられている。
大阪大学大学院基礎工学研究科の高橋英之特任准教授は著書「人にやさしいロボットのデザイン」の著者で、その場にいるだけで安心できる存在「何もしないロボットと心の科学」を研究・提唱している。
直井理恵さんは、ソフトバンクのテクノロジーユニット Chief Scientist室 ROS-SI推進課に所属。渋谷の「Pepper PARLOR」のイベント企画や「THE★ROBOTS」関連の企画・推進も行っている。また、ちょもろー会場でもTHE★ROBOTSの「ロボットダンスショー」や、ソフトバンクと日建設計とSynapSparkによる共同出展ブース「もしロボットとくらしてみたら?」、自動搬送ロボット「Cuboid」の走行デモなどに携わった。
MIXIの長岡輝さんはRomi事業部のデザイングループ マネジャー。Romiは新機能に進化した「Romi Lacatanモデル」(ラカタン)を発表したばかり。ちょもろーでは残念ながら新モデルは展示されなかったものの、Romiとの会話が体験できた。
あなたにとってロボットとは何ですか?
シンポジウムではファシリエーターの石戸さんからスピーカー全員に複数の設問が出され、パネルを使って全員が答えを発表した。例えば「あなたにとってロボットとは何ですか?」という設問では、石戸さんから「今まではロボットというと人の役に立つ存在」、ある意味、道具のような存在という位置付けが強いかもしれないが、それだけではなく違う意見が聞ければ、と投げかけた。それに対して、登壇者からは「自分らしく活きることをサポートしてくれる」「推し」「世界を楽しくする存在」「パートナーであり、人と人とをつなぐ存在」などの回答があった。
あなたにとってロボットとは何ですか?
2問めは、石戸さんが「アニメの影響もあって、日本におけるロボットの存在は諸外国と比較すると少し特徴的なのではないかと感じます。そこで、日本におけるロボットの存在は特殊であるか、とうは思わないか、○か×で明確に答えて頂いた上で、その理由も聞かせてください」と投げかけた。
日本におけるロボットの存在は特殊だと思う?
そのほか、「ロボット開発にあたって大切にしている視点は何か?」「今後の人間とロボットとの関係性はどうあって欲しいか」などの設問が出された。
「ともだちロボット」(パートナーロボット)は、人に寄り添う家族として、これからも人々に愛される存在であって欲しいと思う。その上で今回のシンポジウムは、私達や社会がどうあると楽しいだろうか、どのようにロボットと接していったら素敵だろうか、など、あれこれ考えてみる、そんな機会を提供してくれたように感じた。今後も「ともだちロボット」の活動に注目していきたい。
・青木俊介氏 (ユカイ工学株式会社 CEO)
・太田智美氏(大阪音楽大学 助教):Robot Friendly プロジェクト
・岡田美智男氏(ICD-LAB/豊橋技術科学大学 教授):弱いロボット
・景井美帆氏 (シャープ株式会社 通信事業本部 ロボット・ソリューション事業統轄部 統轄部長)
・高橋英之氏(大阪大学 大学院基礎工学研究科 特任准教授):なんにもしないロボット
・直井理恵氏 (ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット Chief Scientist室 ROS-SI推進課)
・長岡輝氏 (株式会社MIXI Vantageスタジオ Romi事業部 BizDev・デザイングループ マネジャー)
【ファシリテーター】
・石戸奈々子氏 (B Lab所長、慶應義塾大学教授)
ともだちロボットプロジェクト 活動内容
「ともだちロボット」プロジェクトとは
「ともだちロボット」プロジェクトでは、ロボットと人間の関係性に新たな視点を提供し、技術的な革新だけでなく、社会的、文化的な側面から、テクノロジーと人間が融合する未来を模索する。
活動内容
1.ロボットと人間の新たな関係の構築と普及
日本におけるロボットと人間との共生の歴史を整理・分析し、日本のロボット文化を世界に広める。また、異なる文化背景を持つ国々に対して、ロボットと人間との関係性を再考させる機会を提供。
2.ロボットを通じたウェルビーイングの実現
ロボットと人間の感情的なニーズとの間の架け橋を作り、人間の精神的な健康に寄与します。具体的には、現代社会における孤独や疎外感に対処するための一つの解決策として、ロボットの活用と普及に取り組む。これにより、人間関係における新たな形を探り、人々の生活に新しい次元の豊かさをもたらすことを期待。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。